text : daiki tajiri
アジア最大規模のアートブックフェアであるTOKYO ART BOOK FAIR(以下TABF)。第10回目の開催を今年7月12日(金)より予定している当イベントが、それに先駆け3月8日(金)より4月14日(日)まで、東京・銀座に昨年生まれたGinza Sony ParkにてTOKYO ART BOOK FAIR: Ginza Editionとして開催中だ。
我々の知る「祭典」というイメージのTABFとは異なり、1ヶ月という長いスパンで開催される新たな取り組みと言える当イベントは、Ginza Sony Parkのコンセプトでもある「公園」というテーマのもと、新しい空間の構築を試みている。今までTABFに足を運んだことがある者なら、ここに訪れた時、一見その規模の小ささに驚くだろう。しかし、期間中ノンストップで行われる様々なプログラムは、TABF定番のものからここでしか体験できないものまでが濃密に凝縮され、足を運ぶ度に新しい発見に出会えるだろう。
ブース出展料を”本10冊”とし、注目を集めた当イベント。150組を超える出展者が集まった「EXHIBITOR BOOTH」では、毎週末入れ替わりで25〜30組ずつの国内外で活動する出版社やギャラリー、アーティストが各々のテーブルで、アートブックを囲いコニュニケーションの場を生み出している。ブース出展料として集めた1500冊を超える本は「Art Book Vending Machine」という新企画にて活用される。
また、今回久々の復活を遂げた「ZINE’S MATE SHOP」は公募の中からTABFがセレクトした国内外の個性豊かなアートブックやZINE約500タイトルの展示販売が行われるエリアだ。毎日開かれるこのスペースでは、ここでしか手に入らないアイテムを宝探しのような感覚で見つけ出すことができる。素材から手法まで、アイデア次第でスタイルに無限の可能性を持つアートブック。このブースではその中でも最新のアートブックを現在進行形で手に取ることができる場でもある。
週替わりで移り変わる「EXHIBITIONS」スペースも見逃せない。国内でもなかなか鑑賞することの出来ないアーティスト達5組、アーティストデュオ・OK-RM&Daniel Shea、現代美術家・河井美咲、写真家・ホンマタカシ、映画監督、アーティストのミランダ・ジュライ、そしてファッションレーベル・PUGMENTが魅せる印刷物にまつわる展示空間は新鮮である。更に、B3に設けられている「LIBRARY」には各々のアーティストの作品や印刷物、関連書籍がアーカイブされているのも嬉しい。
その他にも、平日限定で、500円または持参したアートブック1冊とコインを交換しキーワードを選ぶと、それに紐づく一冊が受け取り口から出てくるという「Art Book Vending Machine(アートブック販売機)」の設置。新刊から貴重な古書まで取り揃えた、その都度品揃えや形態が変わるフレキシブルな販売移動式本屋「BOOK TRUCK」の参加や、施設内にある「Park Live」と連動した音楽イベント、会場内で楽しめる日替わりのカレーワゴンなど、誰でも気軽にアートブックの世界に入れる、まるで「公園」のような空間づくりを目指したTOKYO ART BOOK FAIR: Ginza Editionは、リフレッシュやアイデアを求めて公園に出かけるような日常的な感覚で、アートブックに触れ、そこから広がる世界を楽しめる機会の創出を深く追求したイベントになっている。
アートブックという表現媒体の元に集った多種多様な人と作品が生み出す空間は豊かな時間を我々に与えてくれるに違いない。また、今年3月にリニューアルしたばかりの東京都現代美術館での開催を7月に控えたTOKYO ART BOOK FAIR 2019も、どのような新しい形で我々を驚かせてくれるのか期待したい。
イベントインフォメーション
TOKYO ART BOOK FAIR: Ginza Edition
2019年3月8日(金)- 4月14日(日)
会場:Ginza Sony Park
東京都中央区銀座5-3-1
営業時間: 10:00 – 20:00
入館料:無料
HP : https://tokyoartbookfair.com/ginzasonypark/