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東海林広太 個展「パンザマスト」

 

写真家の東海林広太による個展「パンザマスト」が、渋谷区神宮前のPrinted Unionで開催される。

展覧会名の「パンザマスト」は、東海林が育った地域で限定的に浸透している言葉で、17時を知らせるチャイムのことを指す。
言葉が意味として成立する条件は必ずしも同一ではなく、自己と他者といった視点の立ち位置や状況に応じて変化していく。それは、主体(鑑賞者)に委ねることを前提とした写真がもつ性質とも深く関わりをもっていることでもあるのだと、東海林は説明する。

窓際の回転椅子、枯れかけの鉢植え、くまの刺繍の帽子、オレンジのランプシェード、日でやけたカーテン、アラミスの香水。本展に並ぶ写真群は、東海林自身が育った場所に「かつてはあったもの」たちだ。過去に存在したものと、いま目の前にある事象を見つめ、変化を見出すことで、「写真」に対しての考察を試みる取り組みであるとも言える。

また、展示に合わせて、2019年3月31日から12月30日にかけて綴られた東海林の日記の言葉を抜粋し、写真と言葉をまとめた本もリリースされる。

 

■作家ステートメント

どこをいくら探してももう見つからないことがある。
それは人だったり場所だったり記憶の中の景色だったりする。
写真を撮るようになってからなんとなく、地元を撮るようになった。きっかけはいくつかあったけどなんとなくが今も続いている。

今でもふと、もう存在しない場所やもう会えない人を探してしまうことがある。記憶の中のイメージはどんどん曖昧になっていく。
撮れる時になるべく全部写そうと思っていたけど写真を見返すと案外撮っていなかった。

窓際の回転椅子、枯れかけの鉢植え、くまの刺繍の帽子、母が育った部屋の壁紙、オレンジのランプシェード、くるみボタンのカーディガン、ポケットに残ってたチョコレート、日でやけたカーテン、部屋を繋ぐバルコニー、壊れた時計、アラミスの香水、ショートホープ2箱、淡い水色のタオルケット、話し声、沈黙した時のTVの音(再放送の時代劇)、笑い方、お茶を注ぐ音、5時のパンザマスト、刺繍の花束、渇いた骨。

実家の前の道は緩やかなカーブで見通しが悪かった。
俺は向こう側がよく見えないその道が好きだった。カーブの先、曲がりきった次の瞬間に全く別の場所に行けるかもしれないと、いつも思っていた。
あの家はもう無いし、買いに行かされた煙草の銘柄と握りしめた小銭の感触しか覚えていない。

撮って残したことより撮っていないことは山ほどある。そういうふうにこれからも続いていく。

東海林広太

 

■作家プロフィール
東海林広太(しょうじ・こうた)
1983年 東京生まれ。2007年よりスタイリストとして活動した後、2014年から写真家のキャリアをスタート。現在、東京を拠点に活動をしている。2017年に初となる個展「Beautiful」を開催、同年「つぎのblue」、2019年「go see」、「過去に写した時間 誰も知らなかった写真について」、「青い光」、「happen」、2021年「everything matters」、「あの窓とこの窓は繋がっている」を開催。

https://ko-ta-shouji.com/
https://www.instagram.com/ko_ta_s/

 

 

 

 

 

 

September 16,2022

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