QUOTATION

井上嗣也展 「Beginnings」

text : daiki tajiri

Designed by Tsuguya Inoue

展覧会風景写真:
Mitsumasa Fujitsuka   ©️公益財団法人DNP文化振興財団

 

 

日本を代表するアートディレクター、グラフィックデザイナーの井上嗣也による個展「Beginnings」が東京・銀座にあるギンザ・グラフィック・ギャラリーにて5月14日(火)から6月26日(水)まで開催中だ。今展覧会では写真とタイポグラフィを用い、一貫した独自の世界観で幻想的なビジュアルを生み出し続ける井上嗣也が自選した今までのアーカイブと合わせ、新作ポスターシリーズを鑑賞できる。

 

1947年に生まれた井上嗣也は、80年代より現在に至るまで、様々な美術展覧会のポスターデザインをはじめ、COMME des GARÇONSやサントリー、PARCO、YMO、サカナクションなどの多種多様な媒体に、圧倒的なパワーを兼ね備える井上嗣也の色に染められたデザインワークを提供し現代におけるグラフィックデザインというジャンルをアップデートしてきた。

 

今展覧会で注目したいのは、展覧会に向け制作されたとされる太陽、月、光、水、油、植物等の写真を駆使した新作のポスターシリーズだ。メインビジュアルにもなっている「The Burning Heaven」シリーズは元の被写体が把握できないほどに光とコントラストが画面を支配するビジュアルが、巨大な支持体に印刷され、まだみぬ宇宙空間をイメージさせる。これらの作品群を前にして、鑑賞者はセンスオブワンダーを感じずにはいられなくなるだろう。また、それとは引き換え、遊び心とユーモアが溢れたシリーズ「Happy Time」では、世界各国の文化的アイテムを素材にコラージュし、彼自身のスタイルを貫きつつ、キューティでコミカルな表情も垣間見せている。

 

タイトルにもある「Beginnings」シリーズも忘れてはならない。「The Burning Heaven」「Happy Time」をミックスしたような作品群は、彼自身が持つ閃きから生まれるイマジネーションと実験的で創造的なプロセスから形成するクリエイティブ精神が、連鎖的に誕生している様にもみえる。

 

多くの人は、絵画や写真など他のファインアートと呼ばれるものには含まれるであろう作り手が持つありのままの意思や感覚を、デザインには個人の意思より生まれることのないものゆえ、意味合いが異なる、いわゆるジャンルが異なると考えることが多いのではないだろうか。確かに、シンプルに自分の頭の中にあるものを形にすることとは異なり、広告や出版など表立った商業的なニュアンスもある故に客観的な視野もっての制作が必要とされるデザインだが、今展覧会に展示される作品群を鑑賞していると、紛れもない作り手の自由を感じることができる。

 

根強いスタイルをもとに作品を生み出す作家は多く存在するが、グラフィックデザインというフィールド以外では不可能な、写真やタイポグラフィ、印刷等の手法で自身の世界を構築していくデザイナーは多くはいないだろう。会場の空間を覆う井上嗣也のデザインワークは、デザインという行為の豊かさを見出し、ものづくりに対する純粋な面白さや美しさを我々に提示してくれる。

 

また、今展覧会に合わせ作品集『The Burning Heaven』(リトルモア)が同時刊行される。2種類のカバーで展開される本作品集に収録された作品は会場で展示されている同シリーズとは異なり、モノクロで統一されていて、展示会場とは異なる新しい見え方ができると同時に、計り知れないデザインの可能性に圧倒されるに違いないだろう。

 

 

 

 

⬛︎展覧会インフォメーション

井上嗣也展「 Beginnings」

会期:2019年5月14日(火)- 6月26日(水)
会場:ギンザ・グラフィック・ギャラリー(ggg)
東京都中央区銀座7-7-2 DNP銀座ビル1F/B1F
営業時間: 11:00 – 19:00
入館料:無料
※休館日:日曜・祝日

HP : http://www.dnp.co.jp/CGI/gallery/schedule/detail.cgi?l=1&t=1&seq=00000738

 

 

 

 

 

 

May 29,2019