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ハーヴィン・アンダーソン 「They have a mind of their own」展

text and photo : daiki taijiri

Hurvin Anderson Speech Bubble, 2019 acrylic on paper 144.2 x 223.5 cm. (56 3/4 x 88 in.) Courtesy the artist and Thomas Dane Gallery

2月22日(金)から5月18日(土)まで、現代アートシーンで世界的に活躍するアーティストを意欲的に紹介し続けている東京・南青山にあるギャラリー、RAT HOLE GALLERYにて、2017年のターナー賞にノミネートされるなど注目を集めているロンドンを拠点とするペインター、ハーヴィン・アンダーソンの日本初個展「They have a mind of their own」が開催中だ。

 

イギリス出身でいて、ジャマイカ系の親をもつ移民二世という立ち位置のハーヴィン・アンダーソン。彼の制作スタイルは自身のルーツであるジャマイカの記憶、場所、時間と、生まれ育ったバーミンガム、その両文化を混ぜ合わせ、様々な風景を描いてきた。

 

壁一面がガラス窓で、日光が直接入る展示空間。そこに展示されているのは作家本人が自身の両親の故郷、ジャマイカの海岸線に点在するホテル群と、それらを取り囲むように草木が生い茂る風景をもとに描いた新作を中心とした、人工物の無彩色と群葉を表す緑をはじめ鮮やかな色彩が絶妙に入り混じる風景が描かれた絵画群だ。

 

彼の代表作であるカリブ海文化特有の装飾が施されたフェンスや鉄格子をモチーフとする《Grafting》シリーズから、新作の牧歌的な熱帯の風景を描いた《Speech Bubble》まで展示されている今展覧会は、ハーヴィン・アンダーソンのペイント作品の集大成とも言え、彼のスタイルを把握するには大変いい機会だ。彼の作品にはユートピアを主題とすると言われているように、この世のものとは思えないがどこかリアリティがある風景が多く見受けられるが、ディティールに注目するとさらに興味深い。

 

例えば、制作過程で動的な画面をつくりだすためビデオカメラからみたイメージを用いたり、重ねられた絵の具の下には製図を描くかのように、規則正しく並ぶ直線がみられたり、描く対象をキャンバスではなく製図用フィルムを用いていたりと、ペインターとしての実験的な表現方法をアグレッシブに行なっている。

 

また、ターナー賞にノミネートされた時の映像にて、彼は自身の作品について、ポスト印象派であるゴッホと1930年代に起きた客観的抽象化運動の第一人者ウィリアム・コールドストリームが制作時に自身の中に存在するという。これは、彼が生み出す景色は過去の巨匠が培ってきた思想やスキルが含まれた上で完成するものだとも解釈できる。

 

彼の持つテーマと幅広く参照された美術史により生み出された、具象と抽象が交差するかのようなスタイルは、複数の文化に属する彼だからこそ完成させられる世界だろう。ジャマイカとイギリス、異なる環境が混ざり合うことで生まれるイメージは、まるでタイムスリップしたかのような新しい世界の景色で、美しさと隣り合うように、どこか儚さも見受けられる。

 

「They have a mind of their own」という展覧会のタイトルにもあるように、我々にはそれぞれの生まれ育った環境や社会的な立ち位置がありそれを受け入れ生きていく。例えば、「故郷」と一概に言っても自身が誕生した特定の場所だけが「故郷」というわけではなく、各々の記憶、場所、時間を元にし自身の「故郷」の存在を特定する。今展覧会は、そんな我々にも持ちうる概念を、少しの間だけ見つめ直す空間とも感じることができる。

 

 

展覧会インフォメーション

ハーヴィン・アンダーソン
「They have a mind of their own」
会期:2019年2月22日(金)- 5月18日(土)
会場:RAT HOLE GALLERY
 東京都港区南青山5-5-3 B1F
営業時間:11:00 – 19:00(定休日:日・月曜日)
入館料:無料

HP : https://www.ratholegallery.com

 

 

 

March 8,2019