QUOTATION

チョン・ユンソク監督 x チャン・ソンゴン(パムソム海賊団ボーカル&ベース)トーク

text by Asako Tsurusaki

『パムソム海賊団、ソウル・インフェルノ』 Photo by Park Su Hwan

「キム・ジョンイル、マンセー!」と自由奔放なノイズアクトで世間を挑発し続ける韓国発のグラインドコアバンド、パムソム海賊団。メンバーのチャン・ソンゴン(ベース)とクォン・ヨンマン(ドラム)は、音楽とその過激な歌詞を通して若者の閉塞感を挑発的なパフォーマンスでシャウトし続ける、伝説的な存在であった。取り壊される直前の建物や済州島の4.3事件集会、そして日本で勃発した反核デモなど、様々な社会問題と接点を持つ場所で生き生きと暴れる彼らの言葉は、プロデューサーであり友人のパク・チャングンが国家保安法違反の嫌疑で逮捕された瞬間、突然躍動を失ってしまう。彼らの全てを見ていた映画作家チョン・ユンソクが映像に描き出した「翼をもがれた彼らの姿」は、皮肉にも、韓国に根強く残る非民主主義的な壁が存在していることを警告している。

今回、馬橋ワンダーランド映画祭会場で来日したチョン・ユンソク監督とパムソム海賊団のチャン・ソンゴン氏、カメラマンのパク・スファン氏によるトークが行われたので、その一部を紹介したい。

 

監督に対して質問です。パムソム海賊団の二人を撮影しようと思った最初の動機について教えてください。

チョン・ユンソク:
彼らと初めて会ったのは、ソウルの「トゥリバン」といううどん屋でした。再開発による立ち退きを拒否していた店のオーナーとインディー音楽家たちが立てこもって、連日ライブを開催していたんです。そこで警察のコスプレを身に纏い、何を言ってるのかわからないノイズアクトを繰り広げていたのが彼らでした。とにかく奇妙で、面白い奴らだなと思いましたね(笑)。
彼らの音楽は「聴く音楽」ではなく「読む音楽」。僕は彼らのパフォーマンスを見て、それを伝えたいと思いました。音楽自体はノイズですが、そこには強い権力に対して戦っている、私たちのような小さき存在の物語が入っています。そこがパムソム海賊団の面白いところです。でも最初、彼らを撮影していると言ったらみんなに笑われましたね(笑)。でもその時に、彼らの音楽はうるさくて意味がない馬鹿な音楽だと思われてるけれど、僕には彼らの面白さが理解できると思いました。特に、詩的な表現が気に入っていました。
これまで上映された韓国映画史の中で「金正日万歳(キム・ジョンイル、マンセー)!」と言ったことがあるのは、僕のこの作品とパク・チャヌク(『JSA』)だけでした。それは「金正日万歳」という言葉自体がレッドコンプレックスからくるタブーだからなんです。だからこの映画を上映したら、韓国の若者にもっと「金正日万歳」という言葉を面白がって遊んでくれるようになると思ったんですが、結局以前と同じく恐怖感があるだけのようです。それは今の韓国の若い世代の人たちが、パンクカルチャーというものを理解していないからだと思います。

監督にとってパンクとは何ですか?

チョン・ユンソク:
説明が出来ないけれど、ただそこにある自然なものだと思います。パンクは音楽ではない。パンクは生きる姿勢なんです。「金正日万歳」もそんなパンクセンスによるものです。

撮影を始めた時、何かが起きる予感はありましたか。

チョン・ユンソク:
パクさんが捕まった時、この映画は成功すると思いましたね(笑)。でも友達だから、逮捕されていい気分なわけはありません。だからこの時、僕は撮影を続けるべきかすごく悩みました。彼が無罪になってほしいけれど、映画的には有罪になったほうが面白いかなと(笑)。冗談です(笑)。

パク・スファン:
この作品が上映された後、チョン監督は韓国映画のブラックリストに入れられてしまいました。創作活動にとって良くない状況ではあります。彼だけではなく、他にも100人くらいの名前がブラックリストに並んでいまして、彼らはこの時に記者会見を行ったりするんですが、監督はそれを見て笑ってるんです(笑)。なぜ問題視するんだい?こんな映画を作ったら、リスト入るのは当たり前だよ。むしろ自慢したほうがいい、と(笑)。

チョン・ユンソク:
韓国人はもともと、全てに対して怒ってるからね(笑)。

ソンゴンさんは、この作品を観てどのように感じましたか。

チャン・ソンゴン:
20代の日記を見てるみたいで恥ずかしいですね(笑)。映画の後半で、ヨンマンがこの会場(素人の乱12号店 エンジョイ☆北中ホール)で寝てるシーンがありましたが、なんだか懐かしくて感慨深いです。

解散後、今はどんな活動をされているのですか。

チャン・ソンゴン:
今は映画音楽やゲーム音楽、CM広告の音楽作りなどをしています。

チョン・ユンソク:
彼は結婚もしましたし、だいぶ人が変わりました(笑)。撮影期間を始めてから完成するまで6年もかかりましたから、事情も人も変わってゆくものです。

映画の始まりは2010年でした。6年ということは、解散と完成は同じ2016年ということですね。バンドの解散は、作品のエンディングに対してどのような影響があったのでしょうか。

チョン・ユンソク:
本当のことを言うと、映画のエンディングに彼らの次の未来となるセカンドアルバムが出るシーンを映画に入れたいという気持ちがありました。でも解散してしまったので、それは叶いませんでした。パムソム海賊団はこれまで、ポリティカルな存在だと勘違いされていました。パクさんの逮捕事件もされたりもありましたしね。でも僕から見て彼らは「ミュージシャン」であり、そうあることが幸せだと思っていました。だからこそ、セカンドアルバムを見たかった。ミュージシャンとしての、次の選択が欲しかったんです。エンディングで「解散した」となるよりも、セカンドアルバムのタイトルが出る方がよりポジティブでしょう。でも歌詞を作っていたヨンマンが、書きたいけど書けなくなったように、僕には見えました。もう話したいこと全部言ったからもう話すことがないと言って、それからずっと書いてないんです。

ヨンマンさんが歌詞を書けなくなったことは、パクさんの逮捕と関係があるのでしょうか。

チョン・ユンソク:
パクさんが逮捕された後、ヨンマンには恐怖感が宿ったようでした。同じこと(「金正日万歳」)をヨンマンもTweetしたのに、パクさんだけが捕まったのはなぜだったのだろう、自分もそうなるのではないかという、責任や恐怖によって彼は書けなくなったのかもしれませんね。ヨンマンは革命を起こそうという考えを持っているわけではない、ただのドラマーでした。韓国にとって一番の脅威は、北朝鮮という存在です。それを超えるもっと強い歌詞を作りたい思っても、実際に作ったらどうなるかわかっているから、誰もやりません。僕?僕は映画が作る空間と、その後に起こる時間を作っているんです。

 

 

『パムソム海賊団、ソウル・インフェルノ』
(2017年 / 韓国 / 119分)
監督、脚本、編集:チョン・ユンソク
撮影:ホ・チョルリョン
製作:チョ・ソナ
配給:M-Line Distribution
https://www.yidff.jp/2017/cat041/17c052.html

 

チョン・ユンソク監督プロフィール:
1981年、韓国ソウル生まれ。韓国芸術総合学校、ヴィジュアルアーツ研究で学士号、ドキュメンタリー映画制作で修士号を取得。2010年バンクーバー映画祭や2012年光州ビエンナーレにて展示・上映。1990年代に起きた韓国の連続殺人事件を初めて題材とした長編デビュー作『Non-fiction Diary』(2013)は、2013年釜山国際映画祭メセナ賞、2014年シッチェス・カタロニア国際ファンタスティック映画祭ニュービジョン部門長編ノンフィクション作品賞、2014年ベルリン国際映画祭NETPAC賞など、国内外で多数の賞を獲得した。『パムソム海賊団、ソウル・インフェルノ』はYIDFF2017のアジア千波万波部門で特別賞を受賞した。
https://www.instagram.com/yoskall

 

 

 

 

January 22,2019

『パムソム海賊団、ソウル・インフェルノ』 Photo by Park Su Hwan

『パムソム海賊団、ソウル・インフェルノ』 Photo by Park Su Hwan

『パムソム海賊団、ソウル・インフェルノ』 Photo by Park Su Hwan

『パムソム海賊団、ソウル・インフェルノ』 Photo by Park Su Hwan

『パムソム海賊団、ソウル・インフェルノ』 Photo by Park Su Hwan

『パムソム海賊団、ソウル・インフェルノ』 Photo by Park Su Hwan

左:チャン・ソンゴン氏 / 右:チョン・ユンソク監督 馬橋ワンダーランド映画祭会場(素人の乱12号店 エンジョイ☆北中ホール)にて。

左:チャン・ソンゴン氏 / 右:チョン・ユンソク監督 馬橋ワンダーランド映画祭会場(素人の乱12号店 エンジョイ☆北中ホール)にて。