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成山画廊によるコレクション展「Mirror of Fashion」レポート

text, photo : daiki tajiri

チャールズ・アイゼンマン JOJO: The Russian Dog Face Boy 1884 Photo by Keizo Kioku © Charles Eisenmann Courtesy of Gallery Naruyam

 

 

時代のアーカイブとして、写真という媒体は当時の状況を確実に近い形で記録することができる。4月21日(土)から6月2日(土)まで、東京・天王洲にあるKOSAKU KANECHIKAにて開催されている、成山画廊によるコレクション展「Mirror of Fashion」では、現在までに活躍するファションフォトグラファーによる形跡を鑑賞することができる。

 

20世紀前半のファッションフォト界を牽引したイギリスの写真家セシル・ビートンのエッセイ「The Glass of Fashion」からとった今展覧会「Mirror of Fashion」はファッションポートレートをキーワードにコレクション展でしか実現することのない、時代や世代を超えて作品を客観的に鑑賞、学ぶことができる。

 

異なる時代に撮影された作品が隣り合わせにひとつのスペースに展示されている今展覧会は、写真家や場所もまったく異なるはずなのに、不思議と奇妙な統一感がある。例えば、ヴィクトリア期に⾒せ物⼩屋で活躍した⼈々のポートレートのヴィンテージプリントの隣に展示されるのはファッション誌「VOUGE」元編集長エドナ・ウールマン・チェイスの娘、女優のイルカ・チェイスの姿だ。写真の画角や構図はもちろんのこと、服装や表情も似つかわしくとても半世紀違う時代に撮影された写真とは思えない。

 

また、アレクサンドル・ロトチェンコによる映画監督エスフィリ・シューブのポートレートの隣に展示されているのは、同ギャラリーのメインスペースにて個展「晴れた日、東京」を行う鈴木親の花をモチーフにした作品だ。このように、被写体や手法も全く異なる作品同士も実際に鑑賞するとどこか共通した志向を感じ取ることができる。これも、コレクション展でしかできない不思議な体験のひとつではないだろうか。

 

今回の展示が、一般的な写真コレクションの展示ではなく、ファッションフォトであり、ファッションポートレートであることを理解するのは、この展覧会を解釈する上でとても重要なことではないかと感じた。プロダクトなどとは異なり、商業製品のなかでもファッションというジャンルはイメージを軸に作り出され、言語化することが難しい分野だ。そこから生まれる写真作品は宣伝とうたうことも出来るが、独立した芸術作品としてみることも可能だ。共通してみえるが全く異なる作品達は、作家自身も気づくことのない共通したメッセージやイメージによって生み出されたのではないだろうか。

 

全体的な展示手法にも注目すべき点がある。作品によって異なる素材や手法をオリジナルで制作しているフレームは作品自体のイメージをより強調すると同時に、説明的すぎず、芸術に対して誠実な姿勢を感じてとることができる。それは、展示空間にも言えることで、KOSAKU KANECHIKAの天井の高いスペースを贅沢に使ったキュレーションは、フォトグラファーのひとつのジャンルを影から支える姿を見ているようにも感じる。

 

文化を知る上で、そして時代を知る上で、過去を知り自身の中でアーカイブし続けることは、考察するという意味でも、新たにイメージする上でも大変重要なことを、そして、そこから生まれる新たな発見が存在することを、今展覧会に足を運び感じることができた。

 

 

 

 

■ 展覧会インフォメーション
「Mirror of Fashion」
2018年4月21日(土)- 6月2日(土)
会場:KOSAKU KANECHIKA
東京都品川区東品川1-33-10 TERRADA Art Complex 5F
営業時間:11:00 – 18:00(火・水・木・土)11:00 – 20:00(金)日・月・祝は休廊
入館料:無料
HP:kosakukanechika.com

同時開催
鈴木親展「晴れた日、東京」
2018年4月21日(土)- 6月2日(土)

 

 

 

 

May 31,2018