アーティスト、Kazuki Samata インタビュー
text, photo : Mahiro Wada

展示会場エントランス
風邪を引いたときに心配を受けること、洋服を選ぶときに外界からのイメージに縛られていると感じること。こうしたことに心地の悪さや違和感を感じるという。話を聞く傍ら、インタヴューも一息ついたところ、止まることなく流れ込んでくる、アニメーションで語られたアーティストの声。
11月14日から11月19日まで開催された、Kazuki Samataによる個展『AMBIVALENT』はとめどないエネルギーにあふれていた。
今回の展示『AMBIVALENT』について、おしえてください。
テーマは、相反する感情の交錯、両価性、両面価値です。どんなことにも、別の反面がある。普遍的な感覚を、本当にそうなのか?と改めて見つめ直し、多角的な視点を持とうという試みをしました。『POWER SANMON』『あなたに寄り添う。暮らしに寄り添う。』『東北ガイドブック』『いいねの言い値』『印象派』『PRINT OUT』『帰り道』『SHOP』『ニルヴァーナ』の計9作品で構成をしています。自分の中にあるこうでなければいけないという概念、普段当たり前だと思っていることを一回なくした状態で発想をしていったのが今回の展示です。
それぞれの作品には値段が付いていて、アートとして不思議な感じがします。
わたし自身、美術作品を作っている感覚はありません。『あなたに寄り添う。暮らしに寄り添う。』ではフリーマーケットやネットオークションの場で販売を行い、その活動に対する人々の反応を記録しています。この作品の最初の発想は、変なものを売りたいというところから始まっているんです。メルカリに変なのを出してみようかなと(笑)。その時に、ちょうど目の前にライターとUSBプラグがあって はめてみたら『これライタースタンドとして売れるんじゃないか?組み合わせて彫刻にして売ろう』って。最終的には、違う使い方を伝えて、観た人が日常的にいろいろなことへ疑問を持つきっかけになればいいなというコンセプトに落ち着いています。
テーマとして、『ユーモラスに置き換える』と仰っています。ユーモアとはなんだと思いますか?
綺麗な絵画を見た時や、精巧な彫刻を見た時に「ああきれいだな」とか「細かくてすごいな」とか思いますよね。そう思うきっかけと同じくらいのものなのかなと思います。わたしが作るものは、ひとつも手を加えていません。だけど、そこにユーモアを加えることで、同じくらい、匹敵するぐらいまではいけるんじゃないかって。ユーモアは頑張れば技術に追いつけるんじゃないかというのは、気になってもらえるきっかけ作りの一つだと思います。
作品へ親しみやすさを感じます。コミュニケーションという点について、何か思うことがあればおしえてください。
そのような部分は大切にしています。美大生だからこういうものをつくろう、ギャラリーを借りたからこういうものを作ろうとは考えずに、美術に関係ない人たちも見るものなので、より多くの人がアクセスできるような作品作りを心がけています。また、現代の私たちのコミュニケーション手段といえば、SNSが当たり前になっていますよね。『いいねの言い値』ではInstagramに投稿されたあるイメージについたいいねの数を、値段に置き換えた作品です。SNSでのいいねの感覚はとても曖昧です。しかし現実には、それに行動や感情を縛られてしまうことが多々あります。その重みはお金に相当するのではないかと考えました。SNSにおいて他者からの曖昧な反応に対し一喜一憂をすることは、良いコミュニケーションだとは言えません。
最近気になることはなんでしょう?
この展示を行うにあたり、心理学や宗教が気になりました。例えば、心理学にはジンクピリチオン効果というものがあります。ジンクピリチオン入りのシャンプーが発売された当時、ジンクピリチオンがいったい何なのか誰もわからないのですが、どこか効きそうだということですごく売れたそうです。このように名前に踊らされて価値の決定をしてしまう心理は、『印象派』の水素水入りコーヒー¥300やマイナスイオン入りミルクコーヒー¥200、本当は売りたくない大事なミルクコーヒー¥15200のような作品に当てはまります。心理学の本を読んでいくと、ほとんどが当てはまっていくことが面白いですね。あと、一回なくした状態でものをみようということを謳うのは、仏教だと思います。言いたいことの最終地点が同じということもあり、とても気になる存在です。座禅を組んだり、実際に体験をしてみたいです。
これからどのような活動をしていきたいですか?
今回のような作品のイメージは、これからの作品にもついてまわるものだと思います。ギャラリー以外の場所でも展示、発表していきたいです。つい自分の世界でものごとを考えがちになってしまうので、もっといろんな人と一緒に何かをやってみたいです。作品を通して、鑑賞した人がその物事について考えるきっかけを作っていければいいと思います。
AMBIVALENT
2017/11/14(tue)-11/19(sun) 11:00-20:00
東京都港区南青山1-15-26 紙音館 B1 Gallery EGG
url: http://www.gallery-egg.com/
Kazuki Samata
多摩美術大学美術学部情報デザイン学科メディア芸術専攻卒業
2016年度 学生CGコンテストブロンズ賞受賞
web:http://s-life.under.jp
twitter:S_U__life
November 30,2017