「ヴィヴィアン・サッセン “Of Mud and Lotus”」レポート
text, photo : daiki tajiri

Ra 2017 Viviane Sassen ©Viviane Sassen, Courtesy of G/P gallery
力強い作家性と美しい色使いでファッション・フォトグラファー、現代アーティストとして世界中で活躍するヴィヴィアン・サッセンの新作を東京・恵比寿にあるG/P galleryで10月6日から11月25日まで鑑賞することができる。
今回の新作シリーズは女性のパワーがテーマになっており、そのモチーフは妊婦、授乳など直接的なものから、卵やミルク、きのこなど命をイメージさせられるものまで様々だ。生々しいモチーフとアーティスト自身が本来持つ、鮮やかでインパクトを持ちながら柔らかい色彩が美しく混ぜ合わされている。
常に世界を旅しつつインスピレーションを得て制作を続けている彼女の作品はモデルや撮影場所も多様性に溢れており、今回の展示でもそれを感じることができる。また、独特な鮮やかで上品な作風も幼少時を過ごした南アフリカに対する敬意を感じる。作家性が常に力強い彼女の作品は、ファッションフォトや広告などに関わらず個性をしっかり発揮しており、ひとつの世界を形成し、それをみている我々は作品に触れると同時にその世界へ引き込まれる。
作品制作を行う前に、ドローイングやスケッチをするということもあり、絵画的な作品が多いというのも面白い。確かに、今回の展示をみればわかる通り、写真に直接絵の具を載せたり、切り取った写真を別の写真に貼り合わせてコラージュにしたりと実験的な制作も積極的に行っている。
作品によっては額を使用しないラフな展示方法や、作品の説明展示が一切ない状態も我々に作品の興味をより引き立たせてくれる。キャプションを取り除いて作品と向き合う時間を重要視した展示が増えているのは現在の傾向としてあるが、興味深いキュレーションが伴うことにより、観覧者は、作品はもちろんのことそれらが存在するギャラリー、つまりは空間と向き合うことができるのだ。
今回の展示のタイトル「Of Mud and Lotus」は、「泥中の蓮」ということわざからインスピレーションを得ている。本来は今回の新作展のトータルイメージとして提示された言葉ではあるが、この展覧会自体を説明しているようにも感じた。というのも、大都会東京の片隅に位置するG/P galleryという場所で開催されていることによって、ここを訪れ作品を鑑賞する束の間の時間、そこで得る豊かな発見を指しているようにも感じたからだ。
このように、ヴィヴィアン・サッセンの新作はみる度、毎回新しい刺激を得ることができる。それは原始的な解釈から始まり、社会的メッセージ、個人的な物事の価値観まで多義に渡る。あらゆる角度からベクトルを伸ばしているのにも関わらず、一目見れば彼女の作品だと理解できるのは、彼女の持つ、ぶれない作家性がそれらにしっかりと染み込んでいるからではないだろうか。
また、展示に合わせて、アートビートパブリッシャーズより日本で2冊目の写真集「Of Mud and Lotus」も刊行。アーティストの来日に合わせてトーク・イベント、ブック・サイニングも行われる予定なので、この貴重な機会にぜひ足を運んでみてはいかがだろうか。
■展覧会インフォメーション
ヴィヴィアン・サッセン “Of Mud and Lotus”
会期:2017年10月06日(金)〜 2017年11月25日(土)
時間:12:00-20:00 (最終日は 17:00まで)
会場:G/P gallery 150-0013 東京都渋谷区恵比寿1-18-4 NADiff A/P/A/R/T 2F
URL:http://gptokyo.jp/archives/4066
■イベントインフォメーション
トーク・イベント & ブック・サイニング
登壇者:ヴィヴィアン・サッセン
新刊「Of Mud and Lotus」の発行にあわせて、ヴィヴィアン・サッセンによるトーク・イベント、及びブック・サイニングを開催予定。
■作品集
「Of Mud and Lotus /Viviane Sassen」
108 pages,4c, 23.2 x 28.7cm, hard cover
Edited by Shigeo Goto, Sawako Fukai
Designed by Yoshihisa Tanaka
First edition, 1,000 copies
ISBN 978-4-902080-48-3
6,480円
October 22,2017