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伊藤ハンス インタビュー

interview & text: Misaki Nagasaka  

 

2012年よりファッションとインテリアを基軸としたブランド「Ecole de Curiosites」をスタートした伊藤ハンス。Delier IDEEにおける今回の展示「Cabinet de Curiosites」が彼のデビューコレクションとなる。三宅一生やイヴ・サンローランを輩出したEcole de la Chambre Syndicale de la Couture Parisienneを卒業し、Maison Martin Margielaでのスタジオ勤務経歴を持つ彼に話を聞いた。

 

 

■デビューコレクションとなる「Cabinet de Curiosites ーハンスの魅惑の小部屋ー」展について教えてください。

タイトルの「Cabinet de Curiosites」はフランス語で、日本語に訳すとCabinetが収集棚、Curiositesは好奇心という意味です。部屋というニュアンスもありますが、フランスでは博物館をイメージする人が多いですね。もともと、貴族が自分の富と名誉を保持するため、客人たちをもてなすときに、世界中から集めた珍品名品がおさめられた陳列棚を見せたというのがこの言葉の由来です。僕は、高級なものをどうこうしたいというよりも、好奇心おもむくままに作ったものを、自分にとっての高級なものとして扱いたいという気持ちがあります。

今回の作品のひとつである「風のキャビネット」は、それぞれのフレームは高いものではないですが、 古いキャビネットにはめることによって西洋の伝統を踏襲した高級感を表現しました。古いものとそうでないもののミクスチャーのバランスを見せるという意味で、Cabinet de Curiositesはブランドのテーマとして続けていきたいです。

■ブランドコンセプトについて教えてください。

「泥付きのリュクス」「禁欲的な快楽主義」「制約からの創造」というEcole de de Curiositesの3つのキーワードがあります。
「泥付きのリュクス」というのは、規格化されたものではなく、経年劣化とともに、汚れたり古くなったものにも価値を見いだすことを指します。「禁欲的な快楽主義」は、刹那的ではなく、継続して心地よさや美しさを求めること、「制約からの創造」は無からの創造ではないということ、現代社会においてあらゆる制約のあるなかで、それと向き合い、壊しながら、いかに作るかということをコンセプトとして考えています。

■使用された日用品を素材に選んだ理由はなぜでしょうか。

過去ある時代に作られたもの、そのものの持つ、ブリュットな色、素材感をいかしたいといいうのがあります。例えば、本を使った作品は蚤の市で見つけたものですが、作るときに加工を施したくはないっていうのが第一にあって。その素材の経年経過が進んでいるものに、100年前のものに対して時間旅行のような感覚でまた僕が手を加える。そこでまたちょっと時間が経過していくっていうのが、物語としては面白いなって思って、古いものを素材にすることを選びました。

■日本では日用品を使用するというのは少し離れた世界に感じるのですが、蚤の市が好きなハンスさんにとっては日用品を使って新しいものを作るというのは、日常の一部だったんですね。

それはありますね。フランスの人たちってリサイクル品や蚤の市のものとかを再使用してうまく日常生活に取り入れるんですよ。日本でも、DCブランド全盛期の頃と比べると古着を着るというのが、けっこう当たり前になってきたように感じます。イデーが、リメイクをコンセプトにしている僕の作品で、展示をやりたいと言ってくれたのは、やっぱりそういう流れっていうものが出来てきているのかなって思いますね。

■プロダクトよりアートピース寄りな作品に見えますが。

アートピースに見える作品が多いんですが、飾るだけではなく、実際に使用することを考えて、プロダクトとしての機能を果たせるように、ネクタイをかける部分をつけたりとか、バックとして使用出来るよう本にはチェーンをつけたりしています。

アートと大量生産、リメイクとリサイクルなど表現はいろいろありますが、既成概念を超えて、アートの要素を含んだプロダクトとかミックスバランスでやりたいなって思います。

■ファッションに興味を持ったきっかけは?

ファッションは自分を飾るという意味で興味がありました。おしゃれすることもショッピングも大好きだったし。作るようになったのは、高校生くらいで、そのころからすでにリメイクを始めてました。
世に出ているものに何か欲しいものがなかったり、古着屋で買ったものは丈が合わなかったりして、全部微調整しなきゃいけないって思っていたときに、服を作っている友達に影響されて、自分も0から作ってみたくなって、作るようになりましたね。
そしたら本格的にファッションでなにか自己表現をしたいと思って、ECSCPに入学しました。

■ファッションからインテリアへ幅を広げたのはなぜですか。

この2つは、すごくつながりがあるものだと思うんですね。例えば、ファッションの展示会をするとき、デザインコンセプトを見せる上で、ディスプレイをすごく大事にします。僕も、自分が着たい服や住みたい空間を、自然と自分の部屋にコーディネートしていました。その中で、アンティークのものを家具修繕しながら使っているうちに、インテリアも作るようになったって感じですね。

■今回のブランドデビューするにあたって、インスピレーションを受けたものはありますか。

ウィリアム・モリスが19世紀に掲げたアーツ・アンド・クラフト運動を意識しました。彼は、大量生産により安価な商品があふれた時代に異議を唱え、従来の生産方法に戻し、芸術でありながら人々の生活を変えるものを制作しようと訴えていきました。

例えば、僕が作った服を提案するとおりに着るのはつまらないと思うんですよ。国籍も体格も違う中で、上手に組み合わせて使ってもらえたら嬉しいですね。作った人と使う人がお互いにどんどん刺激し合って、センスアップしていって、カルチャーとして膨らんだら、文化としても、社会としても成熟したものになると思います。最近は規格化されたものばかりが世の中に出ているので、そこは問題提起していきたいなって思いがありますね。

■今後の予定について教えてください。

ファッションとインテリアを基軸に続けていきたいと考えています。服作りに関してはオリジナルのみで作っていく予定です。リメイクだけではなく、リプロダクトにも興味があるので、デザインを踏襲しつつ新しい商品を作ってみたいです。

http://www.idee.co.jp/shop/news/201203/06-01m.html

March 27,2012

左:風のキャビネット 右:顔のない肖像

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