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キドラット・タヒミック最新作日本公開 / 第28回東京国際映画祭レポート & あいちトリエンナーレ2016開催

text : asako tsurusaki

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2015年の「第28回東京国際映画祭」にて、『悪夢の香り』(77)や「大地の芸術祭越後妻有アートトリエンナーレ」への参加など、ジャンルを横断するアーティストとして日本でもお馴染みのキドラット・タヒミックが久々の長編映像作品を公開する。『バリクバヤン#1』(東京国際映画祭上映時邦題『お里帰り』)と題されたその内容は、世界で初めて世界一周を果たしたとされるマゼラン艦隊が、実はフェルディナンド・マゼランは旅の半ばで命を落としており、実際に世界一周を達成したのはマラッカ出身の奴隷エンリケであると主張するドキュ=ドラマ。

フィリピン大学(UP)でスピーチとドラマを、アメリカのペンシルバニア大学・大学院で経営学を学んだのちにアーティストとなったタヒミックは、1977年にデビュー作『悪夢の香り』でベルリン国際映画祭批評家賞を受賞。続く『月でヨーヨー』ではフィリピン人の発明とされる玩具のヨーヨーを月面で実行するという妄想に取りつかれた青年が、家庭の日常品でロケットを組み立てて月旅行を成功させるストーリーを描くなど、一貫して、自らが生まれたアジアの視点から、欧米の近代主義文明に疑問と批判的なまなざしを投げ掛けている。

本作『バリクバヤン#1』(東京国際映画祭上映時邦題『お里帰り』)もマゼランから始まる長い植民地時代の始まりを、アジアの側から世界史を読み直す壮大な物語。撮影は1980年代から35年以上にわたって継続され、当初は監督本人がエンリケを演じていたが、長期撮影で年齢を重ねたため途中から役をチェンジし、マゼラン役も途中で代わるなど、映画の約束事を飛び越えている。近年第三の黄金期を迎えているフィリピン映画界の作家たちに、巨匠とは思えぬほど軽やかに魅せてくれた。

惜しくもこの壮大叙情詩を見逃した方はご心配なく。8月11日より開催されている「あいちトリエンナーレ2016」の映像プログラムにて、上映が決定されている。3年に1度、愛知をひととき賑わすこの現代アートの祭典は、今回「虹のキャラヴァンサライ 創造する人間の旅」をテーマに、世界中から100組を超えるアーティストが集結する。あらゆるボーダーを越え、多彩な虹を味わいに愛知に行ってみてはいかが?

 

 

【あいちトリエンナーレ2016】
テーマ:虹のキャラヴァンサライ 創造する人間の旅
会期:2016 年8 月11 日(木・祝)~10 月23 日(日)[74 日間]
芸術監督:港 千尋 写真家・著述家|多摩美術大学美術学部情報デザイン学科教授(映像人類学)
会場:愛知芸術文化センター、名古屋市美術館、名古屋・豊橋・岡崎市内のまちなか
http://aichitriennale.jp/

 

【第28回東京国際映画祭】※終了
会期:2015年10月22日(木)~10月31日(土) 10日間
主催:公益財団法人ユニジャパン(第28回東京国際映画祭実行委員会)
共催:国際交流基金アジアセンター(アジア映画交流事業)、東京都(コンペティション部門)
会場:六本木ヒルズ(港区)、新宿バルト 9、新宿ピカデリー、TOHOシネマズ 新宿(新宿区)ほか、 都内の各劇場及び施設・ホールを使用
http://2015.tiff-jp.net

 

 

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キドラット・タヒミック『バリクバヤン#1』 2015 frame-grabbed from iPhone shot by Sang Bum Heo  画像提供:あいちトリエンナーレ2016

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キドラット・タヒミック / 東京国際映画祭上映時邦題『お里帰り』 © Kidlat Tahimik 150分 英語、スペイン語、タガログ語 カラー 2015年 フィリピン 画像提供:第29回東京国際映画祭

 

August 24,2016

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