QUOTATION

「ビルド・フルーガス」が提案するこれからのコミュニティのあり方

text: Yuki Harada

ビルド・スペース

いま分野を問わずさまざまな場で話題となっている「コミュニティ・デザイン」。その言葉自体が独り歩きしはじめている感も否めないが、3.11以降、地域/社会とアート/デザインとの関わり合い、そして、これからの生き方/働き方が見つめ直されていることは確かだろう。今回紹介するビルド・スペースは、それらを考える上で多くの示唆を与えてくれるモデルケースとなる存在だ。仙台から電車で約20分ほど離れた小さな港町・塩竈にあるこのアートスペースのオーナー・高田彩は、カナダ・バンクーバーに5年間留学し、帰国後東京での勤務を経て、2006年に塩竈に帰郷。その後は、このスペースを拠点に、北米アートの紹介や、地元アーティストらとの出張ワークショップなどを行うプロジェクト「ビルド・フルーガス」としての活動を精力的に展開している。

「バンクーバーでは、アートコミュニティのあり方が日本とはまったく違ったんですね。ニューヨークやロンドン、東京などの大都市では、アーティストはエッジーなことをすることが使命とされているところがありますが、バンクーバーのアーティストたちは、コミュニティと連帯しながら、どれだけユニークなことができるかということを重視していました。そこで、自分たちができることを生き様として主張することの大切さに気づき、大都市とは違うコミュニティのあり方を、日本にも紹介できたらなと考えたんです」
東京とは離れた東北の、さらに小さな港町という地理的にも文化的にもメインストリームとは離れた場所から、ユニークで確かなものを提案していく。それが、ビルド・フルーガスの活動を支える基盤になっている。塩竈出身の高田が本来持っていたオルタナティブなものへの志向が、遠く離れた北米・バンクーバーの感性と接続したことも非常に興味深い。

「カナダ人のアートを売ることが目的ではなく、文化のエクスチェンジをしたいんです。それによって何かが変わったり、自分もやってみようと思ってくれる人が出てくれるとうれしい。また、日本におけるローカリティは、どうしてもエコライフ的な方向に行きがちですが、本来はもっと幅広いものだし、こういう形でも生きていけるということを提示していきたいとも思っています」
2007年にスタートした出張ワークショップは、震災以降も主に被災した子供たちを対象に、様々な場所で継続されている。このワークショップには県からの資金面の支援が行われ、ビルド・スペースにも塩竈市長を始めとする市職員が足を運ぶことも少なくないという。こうした小さな街ならではの自治体との関わり合いも、東京のような都市にいるとなかなか想像ができないだろう。
「東北では、以前からコミュニティやコミュニケーションをテーマにした議論や場作りは行われていました。これまでは、どこまで街が崩壊しているかを住民が理解しないまま、街起こしのアートイベントなどが行われていましたが、物理的に街が崩れてしまったいま、こういう試みがハッキリと必要とされている感覚があるし、私たちはそれを提案していける立場にあるのだと感じています」

 

ビルド・スペース
宮城県塩釜市港町2-3-11
www.birdoflugas.com

February 22,2012

さまざまな場所で開催されている「飛びだすビルド!のワークショップ」

ビルド・スペースのある塩竈市の街並み

中央の女性がビルド・フルーガス主宰の高田彩さん