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映画『CUTIE AND THE BOXER』レビュー

text : Asako Tsurusaki

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NY在住40年の現代芸術家、篠原有司男(愛称ギュウちゃん)81歳 VS 妻 乃り子(a.k.a. CUTIE)60歳を描いたドキュメンタリー『CUTIE AND THE BOXER』。NYのアーティスト・コミュニティ発祥の地であるDUMBOに棲息する伝説のカップルを追った5年間という歳月は、もちろん二人の長い歴史と伝説の瞬間を記録するのに十分な年月とは言えないかもしれない。しかしこの二人を追った若きNYの映像作家ザッカリー・ハインザーリングは、アートが生まれる瞬間のみならず、アーティストに生まれついてしまった人間が”ふたり”で生きることを選択した時に生まれる苦しみ葛藤に注目し、その関係性が変化していく瞬間をとらえることに成功した。

 

DUMBO地区に棲息する日本人現代アーティストのハシリとして著名なギュウちゃん。彼は荒川修作や赤瀬川原平らとネオダダイズム・オルガナイザーズを結成し、その後代表的なスタイルとなる”ボクシング・ペインティング”スタイルを確立。大江健三郎やウィリアム・クラインに注目され、戦後の東京のクリエイティブ・シーンを瞬く間に駆け上がった伝説のアーティストだ。NYに渡米してからはウォーホールらアンダーグラウンド・アーティスト達と共にNYを彩り、いまなおMoMAや グッゲンハイム、ポンピドゥー・センターなど世界中で彼の作品を見ることが出来る。そしてそんな彼を支えてきた妻・乃り子は、19歳の時NYへアートを学ぶために留学した際、篠原に出会う。すぐに恋に落ち学校を辞めて一緒に暮らし始めた翌年、長男を出産、しばらく子育てと生活のために制作活動ストップを余儀なくされる。ここからの彼女の長い苦悩が始まり、それは自身をモデル描いたイラスト”CUTIEシリーズ”によって彼女の復讐は少しずつ遂げられていく…。

 

「時が経つにつれ、お互いに心地の良さを感じる存在になり、カメラの前で彼女の複雑な物語が映し出され始める。僕は、彼女の話は映画の中で物語の横糸になるとすぐに気付いた」。ザッカリー監督が乃り子との関係をこう述べている様に、これはパートナーであり最大の強敵であるギュウちゃんという荒波に立ち向かう、CUTIEの物語だ。フィルムからちくちくと感じる彼女の苛立ちや、それをのらりくらりと流すギュウちゃんとの関係は、オノ・ヨーコとジョン・レノンやキム・ゴードンとサーストン・ムーアなど全てのアーティスト・カップル同様、生傷の絶えないピースに溢れている。

 

「ちがう花が同じ鉢の中に入っているから、トラブルはあるし、栄養も足りなくなっちゃう。でも、うまくコンビネーションがおれたとき、お互いが2つの素晴らしい花を咲かせることができる」。乃り子が振り返る40年というこんがらがった長い時間は、”ふたり”で花開くことの難しさや苦しさを見せられ、若輩者としては痛くもありつつ目が離せない。

 

今作の公開にあわせて、「篠原有司男・篠原乃り子二人展/Love Is A Roar-r-r-r! In Tokyo 愛の雄叫び東京篇」も開催中。作中に登場するCUTIEシリーズの原画やギュウちゃんの大作を間近で見ることが出来るのでお見逃しなく。

 

 
12月21日(土)、シネマライズほか全国ロードショー!
■公式サイト  www.cutieandboxer.com
■提供:キングレコード、パルコ
■配給:ザジフィルムズ、パルコ

 

公開記念イベント:
篠原有司男・篠原乃り子二人展
Love Is A Roar-r-r-r! In Tokyo 愛の雄叫び東京篇(開催中)
会場:パルコミュージアム(渋谷パルコ パート1・3F)
期間:2013/12/13 (金) -2014/01/13 (月)
http://www.parco-art.com/web/museum/exhibition.php?id=616

 

 

 

 

 

December 18,2013