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ハーモニー・コリン参加オムニバス 『フォース・ディメンション』レビュー

text : UMMMI

ハーモニー・コリン、アレクセイ・フェドロチェンコ、ヤン・キヴェチンスキ 《フォース・ディメンション》                  2012 /106分/英語、ロシア語、ポーランド語 ※日本語字幕付  (C)Danilo Parra 第5回恵比寿映像祭上映プログラムより

 

 

2013年2月8日から2月24日まで行われていた恵比寿映像祭。そこでプレミア上映された『フォース・ディメンション』を紹介する。

 

 

『フォース・ディメンション』は、アメリカ、ロシア、ポーランドの3カ国の気鋭の映像作家によるオムニバス映画。“四次元”をテーマとして、現実とパラレル世界の揺れ動く狭間をそれぞれ描いている。ハーモニー・コリンは19歳の時に書き上げた《KIDS/キッズ》(1995)の脚本家として脚光を浴び、それ以降は処女作『ガンモ』に始まり『ジュリアン』『ミスターロンリー』など、ポップさとセンチメンタルの入り乱れる独特な作品を発表しているアメリカ・カルフォルニア州出身の映画監督。この『フォース・ディメンション』では『The Lotus Community Workshop』という30分ほどの作品で参加している。主演はヴァル・キルマー。監督の妻でもあるレイチェル・コリンも出演している。

今回上映された『The Lotus Community Workshop』は、テネシー州ナッシュビルの小さなスケート場で、ヴァル・キルマー扮する元映画スターが自己啓発セミナーの講師として訪れる物語。自分を賞讃し大袈裟な抑揚をつけながら大衆に向けてパフォーマティブに講演をする姿と、その講演後の夜道に肥えた体でBMXを乗り回す姿は、哀しくも愛おしい。

主演のヴァル・キルマーは25歳の時に『トップ・シークレット』(1984)で映画デビューをし、オリバー・ストーン監督の『ドアーズ』(91)で主役のジム・モリソン役を熱演、『バットマン フォーエバー』(95)ではバットマンであるブルース・ウェイン役を務めている大物俳優。しかし近年はニューメキシコで牧場を営んだり、激太りのゴシップ記事が流れたりと映画業界から距離を置いている時期もあったという。それゆえ今回の『The Lotus Community Workshop』内での元映画スターとして演じる俳優終了宣言や、過去の自分に捕らわれているセリフ回しは彼本人とどこか通ずるところがあるのではないかと感じてしまう。しかしVICE MAGAZINEのインタビューによると、ヴァル・キルマーはハーモニー・コリンの台本通りに演じたので、実際にはフィクションであると語っている。

おびただしいネオンに彩られたスケート場、静かなアメリカ郊外の夜道、人気のないレンタルビデオ屋、プールサイドで夜風を浴びながら吹くリコーダー。自己啓発セミナーで「世界はコットンキャンディーのようだ!」と叫び、エンディングでひたすら歌われるコットンキャンディーという歌詞の曲とともに、笑顔でBMXに乗って疾走するヴァル・キルマー。躁と鬱がレイヤーのように重なったハーモニー・コリンによって描かれる世界は、まるでどこかに存在しているであろう世の中から見捨てられた場所を、コットンキャンディーのように痛みやすく、そして繊細なほど優しく包み込んでいるかのようだ。

ハーモニー・コリンが23歳で『ガンモ』を初めて撮った時に、アンファンテリブル(恐るべき子供たち)と呼ばれ衝撃を与えたが、ヴァル・キルマーを『The Lotus Community Workshop』の主役に抜擢することをみても、未だに誰よりもキッズのようなユーモアと明るさを持ち合わせているように思う。

そんなハーモニー・コリンの新作映画『スプリング・ブレイカーズ』は6月15日から公開される。こちらはビキニ姿が眩しい女子大生4 人の強盗計画から始まる、現実なのか夢なのかすらも曖昧になるほどの激しい春休みの暴走を描いた映画である。

余談ではあるが『KIDS』の脚本は6日間で執筆、『The Lotus Community Workshop』の脚本はなんと2時間で書いたというハーモニー・コリン監督。しかし『スプリング・ブレイカーズ』は頭を悩ませながら書き、自分の頭に銃が突きつけられているようなイメージを持たなければ実現するのに5年はかかっただろうと語っている期待の膨らむ大作だ。

『スプリング・ブレイカーズ』はシネマライズ、TOHOシネマズ 六本木ヒルズ、新宿バルト9、ワーナー・マイカル・シネマズ板橋、川崎チネチッタ他、全国ロードショー。4月にはコリン夫妻の来日も決定している。

 

 

 

March 8,2013