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グラフィティアーティスト、EL BOCHO (エル・ボチョ)  インタビュー

interview/text/photo : daiki tajiri

 

ベルリンを拠点にするグラフィティアーティスト、エル・ボチョ。およそ2年ぶり2回目となる日本での彼の個展「GOLDEN TIMES」が東京・中目黒にあるギャラリー、104GALERIE、104 Galerie-Rにて2018年10月12日(金)から2018年11月25日(日)まで開催中だ。

ベルリンで最も有名なストリートアーティストと称され、「大都市の日常」をテーマに世界を旅し、各国で作品を残す。そんな彼のスタイルに欠かせないのは常にその地独特の環境や空気から得るインスピレーションだ。今回の東京での個展もまたそれに伴い全てが新作。彼自身のストリートアーティストとしてのアイデンティティを形成する要素とはなんなのか、グラフィティというカルチャーに対する想いを尋ねた。

 

◼️今回の展示は2回目とのことで、2年前の来日と異なる点はありますか。

前回の日本での個展はとても刺激的な経験でした。日本の人々や環境はとても興味深く、自身の考えはより柔軟になり、日本での初めての展覧会は特別な経験になりました。2度目となる今回もまた、私にとってとても重要なものでした。なぜなら、ギャラリーでの展示はもちろんのことですが、日本のストリートでインスタレーションを行うことができたからです。日本のストリートには私の住むベルリンとは異なり、ストリートアートは見かけることなく、とても整頓されています。私はそれを変えてみたく今展覧会に挑みました。

 

◼️ストリートで作品を制作し続ける理由を教えてください。

ストリート文化というものは、多種多様なアートピースが集約することにより誕生すると思っています。ストリートアートもまたその文化を築くにあたって重要な役割をしていると思いますが、現在それは違法なものとされていて、他人の許可なしには生み出すことができないものとなってしまいました。
しかし、そのような環境の中にも関わらず、ストリートアートは力強く急速にその魅力を発揮し人々を魅了してきました。政府や大衆がそれを許さなくても、私はストリートアートを描くことが正しいことだと強く信じるから描き続けています。

 

◼️他国と比べて日本では、国特有の文化的側面も関係すると思いますが、ストリートアートやグラフィティに対してのイメージがネガティブな印象を持つケースが多々存在すると思います。

確かに日本という国は特にストリートアートに対して違法なことというイメージが強いのかもしれません。しかし、私は日本人の持つそのイメージは重要だと思いました。日本の美しい建物や壁にペイントやポスターをベタベタ貼るのは多くの人にとっては悪いイメージが湧くのは当然だと思います。しかし、ストリートアートというものは、美術館やギャラリーで展示されるアートとも等しく、みる人の心を柔軟にし、権力や地位などにこだわることなく、誰でも平等その感覚を共有できるものでもあります。

 

◼️ストリートアートというものは、現代だからこそ多様性というものが最大限に引き出されるものだと私も思います。展示作品にはマンガやアニメにも似たタッチの作品が見受けられますが、何か日本の文化にインスピレーションを受けたのでしょうか。

よく言われるのですが、実は関係ないんです。確かに、共通点はいくつかありますが、ベルリンで制作を行っている中で、日本のマンガなどにフォーカスをして制作することはありませんでした。

 

◼️では、制作上でインスピレーションを受けるものなどはありますか。

私にとっては、基本的に全てがインスピレーション源ですね。若い時は誰でも考えや思想が柔軟な感覚を持っていると思います。学校や日常での生活で起きることに敏感に反応し、それを元に自分の解釈を培っていきます。それと同じように、私の中では日々の生活に存在する物事が制作の意欲を掻き立たせます。ストリートという場ではそのような発見が特に多いので、制作の場が必然的にストリートになったのだと思います。

 

◼️今回の展覧会での展示物は全て新作だとききました。共通して金色の背景を使用しているのには理由があるのでしょうか。

最近のヨーロッパを中心とした金銭欲が目立つアートビジネスへ憂鬱を感じていました。売れるための作品を制作、展示したり、コレクターに買ってもらえるようなものをつくる。そのような傾向を逆手にとるような展覧会を今回は目指しました。例えば作品群のひとつに、深刻な難民問題を抱えるヨーロッパ特有のモチーフ、国境を見張る監視塔があります。そういった政治的問題と富を表す鮮やかで眩しい色をつなぎ合わせる。そこで生まれる新鮮な感覚はきっと鑑賞する人の心に、真のアートの可能性を訴えかけると思いました。

 

◼️今展覧会では先ほどもおっしゃていたように、インスタレーションも行っていますね。ゲリラ的に巨大な魚の骨を目黒川に流すものですが、発想はどこから生まれたものなのでしょうか。

政治的なインスタレーションを行おうと思っていました。ある日、友人から日本の魚は汚染され毒があるから食べてはいけないと言われたことがありました。そこから着想を経て今回の作品を作ったのですが、日本ではゲリラアートの規制が厳しく、実行はとてもエキサイティングな体験でしたが大変苦労しましたが、汚染された川、魚の存在を提示するメッセージがこのような方法で表現できたことはよかったです。

 

◼️グラフィティなどとは別にこのようなインスタレーションを取り組む理由はなんなのでしょうか。

ストリートでのインスタレーションは表現として面白い手段だと思っています。ギャラリーで作品を展示することも重要ですが、ゲリラで屋外で表現することは、リスクは確かにありますが、より幅広く多くの人に自身のメッセージを伝えられます。確かに違法なことという意見も理解できますが、政府や大衆が話すことが全て正解とは限らないし、それらを変化させようという力は常に必要だと思います。なので、様々なアーティストとともに様々な場所で、インスタレーションを行なっています。

 

◼️ 手段は異なれど、表現をする思想は同じなのですね。展示されている作品をはじめ、ギャラリー内で放映されているインスタレーションの映像も日本では、なかなかみることの出来ない刺激的な作品でした。

何かを変化させるには必ずリスクは伴うと思います。保守的に意見や表現を提示することよりも、新しい見方で新しい方法で文化を前に進めていく方が重要なことだし、何よりも楽しいと思っています。

 

 

 

展覧会インフォメーション

EL BOCHO (エル・ボチョ)  / GOLDEN TIMES
会期:2018年10月12日(金)~ 11月25日(日)
時間:火~土 12:00~20:00
会場:
104GALERIE 東京都目黒区青葉台3-22-1 目黒ハイツ104
104 Galerie-R 東京都目黒区大橋1-6-4 GARAGE
TEL:03-6303-0956
URL:http://104galerie.com/

 

 

 

EL BOCHO /エル・ボチョ
エル・ボチョは大学でデザインを学んだ後、新聞記事やCDジャケットナドイラストレーターとして活動。ベルリンに移住後、ストリートアーティストとして本格的に活動を始め、「大都市の日常」をテーマに人生への切望と喜びと疑問を投げかける。ベルリンの壁崩壊20周年を記念したCNNインターナショナルによる企画「Go Beyond Borders」(2009年)では、40kmものテープアート作品を発表。高い注目を集めた本作は、のちに、世界最高峰の広告賞の一つである「Clio Awards-Contents & Contact部門」金賞(アメリカ・ニューヨーク/ 2010年)、ヨーロッパで最も歴史ある国際広告芸術祭「Golden Award of Montreux 2010 – Best Use of Media 部門」金賞(スイス・モントレー/2010年)を受賞。その街の歴史や記憶を再認識させる作品により、エル・ボチョはベルリンで最も有名なストリートアーティストの一人として人々に認められ、ドイツ主要都市の他、日本、ロシア、タイ、カンボジア、ベトナム、ブラジル、フランス、イタリアなどで個展を開催、様々な場面で活動している。

 

 

 

 

 

October 27,2018