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田中麻記子「Vu Vu」展覧会レポート

text. photo : Daiki Tajiri

 

 

「男も女も関係なく、人間というものは、一定の距離を保っている方が、いい関係を保っている場合があると思うのです。七夕のお話みたいに。」

 

入り口のキャプションより書かれている作家によるこの言葉は、作家の思想とこの展覧会のテーマを強く表しているように感じる。

 

東京・恵比寿にある、ブックショップNADiff a/p/a/r/tに併設されているNADiff Galleryにて8月3日(金)より9月9日(日)まで、アーティスト田中麻記子による個展「Vu Vu」が開催されている。

 

フランスを拠点に制作活動を行い、鉛筆、パステル、油彩、セラミック彫刻など様々な素材を遍歴しながら自身の表現を続ける田中麻記子による今展覧会は、彼女自身の今年の春から夏にかけて日本の日常的な様々な箇所よりインスピレーションを受けた空間インスタレーションになっている。

 

それは、日本独特の季節感から生まれた「七夕」から始まり、神社の鳥居や海、氷など、我々にとっても、身近で良く知っているモチーフが多い。

 

カセットテープから流れる作家本人が奏でる曲に包まれた展示空間は、それらのモチーフを彼女の生み出す美しく、柔らかいロマンティックな世界観へと落とし込まれることにより、新鮮なアート空間として完成している。

 

「Vu Vu」というタイトルは作家による「déjà-vu」(デジャブ)の語尾からとられた造語で、誰しもが持つ不可思議な感覚に近い感覚が展示空間に足を踏み込むと感じることができるのではないだろうか。

 

また、誰かとコミュニケーションを行う上で重要な人と人との距離感を作品を通して表現しているところも面白い。誰かが生み出したアート作品を鑑賞する上で、作家の意図などを合理的に解釈するということは大切なことだが、少なくとも芸術や表現に関しては、作り手の意図抜きで鑑賞者の思想から生まれた解釈も等しく尊重されるべきものではないだろうか。

 

作家と鑑賞者、そして作品と鑑賞者の距離は「一定の距離を保っている方が、いい関係を保っている場合がある」のかもれない。

 

空間を表現するにあたって、限定された世界観を追求する方法は一般的かもしれないが、ひとりが好感を持つ様々な要素を集めカオスな空間をつくるとその人の人柄や感覚を理解できる。

 

今展覧会に足を運び、空間を構成する絵画をはじめとした作品、笹や砂、空間を流れる風や音楽に囲まれたとき、彼女の持つ時には優しく、時には熱い表現に対する姿勢を感じることができる。

 

また、展示会場であるNADiff a/p/a/r/tでは、今展覧会にあわせた新刊、そしてオリジナルグッズの販売も行われている。また、展示とは別に「田中麻記子の蚤の市」というイベントも平行して開催されているのにも注目したい。アーティスト本人が日頃からインスピレーションを受けている小説や画集、雑貨などを実際に手に取り、購入することができ、彼女が持つ感性を我々も共有できることができる。

 

 

 

 

展覧会インフォメーション

田中麻記子「Vu Vu」
2018年8月3日(金)- 9月9日(日)
会場:NADiff a/p/a/r/t
150-0013 東京都渋谷区恵比寿1-18-4 NADiff A/P/A/R/T 1F
営業時間: 12:00 – 20:00(月曜日定休)
入館料:無料
HP: http://www.nadiff.com/?p=10410

 

田中麻記子(MAKIKO TANAKA)
1975年 東京生まれ フランス在住
国内外での展示を中心に活動。資生堂、花椿web において、「空想ガストロノミー」を毎月連載中。
今後の予定 9月中旬より パリ、サンジェルマン・デ・プレ Galerie Da-End グループ展に参加予定。

 

 

 

 

 

August 19,2018