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映像作家・村田朋泰監督傑作選7作品を一挙上映

text by Asako Tsurusaki

©TMC

 

CGを使わず、人形や背景のセットまでを手で作り込み、動きのなかにはあえてぎこちなさを活かすなどストップモーションアニメならではの独特の世界観が魅力の映像作家、村田朋泰。NHK教育テレビのプチプチ・アニメ『森のレシオ』やMr.Children「HERO」のMVなど多くのメディアで知られる村田監督の、初公開の最新作『松が枝を結び』を含む傑作選7作品を一挙上映する特集上映、『村田朋泰特集—夢の記憶装置』が間もなく渋谷のシアター・イメージフォーラムを皮切りに開催される。

大学時代に人形浄瑠璃やチェコのアニメーションに影響を受け、ミニチュアのセットを作って、関節の入った人形を少しずつ動かし撮影する、コマ撮りアニメーションを制作してきた村田監督の作品は、一切台詞がなく、人形の目線や手のしぐさで感情を表現するのが大きな特色で、国内外のアニメーション・フェスティバルで高く評価されている。

東日本大震災をきっかけに、「冥福を祈る」という行為について考えることで、自分のアニメーション制作がどこへ向かえばいいのかを突き詰めていった村田監督。近年は日本的なるもの、神話や信仰といったことをテーマにした作品を制作している。中でもこのたびの特集上映で初公開となる新作「松が枝を結び」は、2011年に起きた東日本大震災を機に始まった作品。日本人にとっての「祈り、信仰、記録」をコンセプトに、日本列島の起源及びアイデンティティを探る映像叙事詩シリーズの第3作目として制作された。

「巨大地震の直後、わたしはテレビ中継で目にした強大な津波が襲いかかる映像を前に呆然とし、多くの人々が命を落とし深い悲しみを感じ、自分の無力さを噛みしめ亡くなった方々へ深くご冥福をお祈りしました。「冥福を祈る」とは「死後の幸福を祈る」ということですが、わたしはそれまで意味も分からずこの言葉を口にしてました。死後の幸福がどのようなものなのかは誰にもわかりませんが、この言葉をきっかけに脚本を書き始めました。わたしは学生のときから「生と死の間にまつわる記憶」についての物語を制作してきましたが、この物語では死者が自身の記憶を辿り、黄泉の国に向かう、黄泉の国にいっても生きていたときの記憶をとどめていることが幸福なんじゃないかと考えました。またわたしが一卵性双生児であることから、「陰陽」「一卵性双生児」「断層と断層」といった対となるモチーフによって、断層同士がぶつかり合い巨大な力によって生まれる現象と、双子の女の子の心理的現象を同列に表すことを目指しました。「白い山のスノードーム」は「過去と現在」、また「この世とあの世」の綱渡しとして用いました。表情や感情がはっきりした人形と、そうでない人形の素材を変えることで「生と死」を表現し、現在と過去を行き来する展開となっています。仏師は「木に祈りを込めて」埋まっている姿を彫る(掘る)といいますが、わたしもまるで仏師のようにアニメーションを彫っていく思いでこの作品を制作しました。

「彫る」は「掘る」と同様で、掘る行為は地下に向かって掘っていき、また地下にはその土地のさまざまな記憶や記録が埋まっています。「ほる」という響きは「過去を掘り起こす」「記憶や記録を掘り起こす」ことだ解釈しています。わたしにとってアニメーションを彫る(掘る)とは人や地域に起きた重要な出来事、忘れてはならない出来事を末長く受け継ぎ、伝承していくための記憶装置をつくることだと思っています」。

『木ノ花ノ咲クヤ森』、実在した床屋から着想を得て、古き良き昭和の世界を背景に一家に起こる不思議な出来事を描いた『家族デッキ』、娘を亡くした傷心のピアニストが体験する夢の旅を描いた『朱の路』など、15年にわたる創作活動の中から厳選した名作を一挙上映する。“夢”の世界を用いて、“記憶装置”としての映像をつくり続ける、村田朋泰の世界へようこそ!

 

 

『村田朋泰特集—夢の記憶装置』
上映作品:
『家族デッキ(第1話、第2話)』『朱の路』『白の路』 『森のレシオ(こうかんトリ)』『木ノ花ノ咲クヤ森』『天地』『松が枝を結び』
監督・脚本:村田朋泰
製作:TMC
配給:ノーム、TMC
©NHK・NEP・TMC
公式HP:https://www.tomoyasu.net/special2018
予告編:https://youtu.be/S63jUIeW8Hg

3月17日(土)シアター・イメージフォーラム他全国順次公開

 

 

 

 

 

March 12,2018

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