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「マイク・ケリー展 デイ・イズ・ダーン」レポート

text, photo : daiki tajiri

ファーム・ガール 課外活動 再構成 #9  2004-2005年  Art © Mike Kelley Foundation for the Arts. All rights reserved/Licensed by VAGA, New York, NY

 

光るものには影があるように、80年代に輝いた華やかで美しいポップ・アートにも深く漆黒な影がある。1月8日より3月31日まで東京・ワタリウム美術館にて行われている「マイク・ケリー展 デイ・イズ・ダーン」では代表作「DAY IS DONE」を中心に現代にも通ずるアートの持つダークなパワーを“ポップ”に感じることができる。

 

ポップ・アートの裏の帝王とも呼ばれているマイク・ケリーは70年代後半より、レディ・メイドやテキスタイル・バナー、ドローイング、ビデオ・インスタレーションなど、多種多様な表現媒体を利用し、イメージを発表してきた。

 

それらは、当時の大衆文化と若者文化の代弁者と称されるほどで、誰しもが共感するが表には出す事のないネガティブでタブーとされるテーマを、当たり前の様に世間に引き出した。彼を一躍有名にした作品で挙げられるものとして、ソニックユースのアルバム「ダーティ」にて使われたぬいぐるみをモチーフにした作品がある。

 

70年代後半から80年代にかけてのアートシーンというと、当時のヒッピー文化を筆頭とするカウンターカルチャーがオーバーグラウンドにて、括弧付きだがお洒落なものとして理解されるようになり、有名アーティストの作品は高値で取引され、表現に対する人々の理解が急に広がっていった時代だ。

 

今回の展示されている「DAY IS DONE」は作家のテーマや考えを手段としてインスタレーションに置き換えているということが面白い。つまり、アーティストというものはひとつの分野を選択して表現を行うということが基本と思われがちだが、イメージもしくは感覚を元にペイント、映像、ダンス、ファッションなど複数の媒体でひとつの作品を生み出すこともできると、改めて気付かさせてくれる。

 

誰もが持っている、幼少期のトラウマを題材にしたこれらの作品群は、幼少期ならではの、残酷で狂気的なテーマがカラフルでポップに表現されている。そこへ当時の時代背景を感じさせる宗教観や文化的な面も垣間みえるのがマイク・ケリーの侮れないところだ。

 

一緒に展示されている、初期の作品「エクトプラズム」シリーズや天井から垂れ下がる布作品「女々しいメタル・クローバーの蹄」なども人々がイメージするダークな世界と皮肉が心地よくこもって空間の一部として居座っている。

 

インスタレーションやメディアアートの展示の多くは、例えばホワイトボックスなどを利用したりと、ひとつの規則正しい独立した空間芸術として展示されることが多い。しかし、今回の展示では映像作品をはじめとした作品群が美術館全体に調和された空間が形成されている。つまり、感覚としては美術館に入ったというよりも、エキゾチックで不思議な世界に入り込んだ感覚に近いものを感じる。これはワタリウム美術館の持つ特有な空間構成の力も相まった上での結果ではないだろうか。

 

実際に今回の展覧会に訪れて、表現をすることに対しての偉大さと、自分でも表現者になれることの喜びを知ることができた。自身のイメージを構築する事に対して、ルールはなく、方法の縛りもない。「映画、ポップソング、物語は感情のレベルでは現実のものなんだ。」とマイク・ケリー本人が語ったように。

 

 

 

■マイク・ケリー
アメリカのアーティスト。1970 年代後半より、パフォーマンス、ペインティング、ぬいぐるみやサウンドを用いたインスタレーションなど、多形態、多様式な作品を発表。ポール・マッカーシーやソニックユースとのコラボレーション、音楽活動やアルバムジャケットの制作など、アート以外の幅広い活動も行った。
「ニューヨーク・タイムズ」によると、「過去四半世紀で最もアメリカ美術に影響を与えた一人であり、アメリカにおける大衆文化と若者文化の代弁者」とされる。

 

 

■展覧会インフォメーション

マイク・ケリー展 デイ・イズ・ダーン
会期:
2018年Ⅰ月8日(月・祝)- 3月31日(土)
休館日:月曜日(2/12は開館)
開館時間:11時より19時まで
(毎週水曜日は21時まで延長)
入館料:大人 1,000円 / 学生(25歳以下) 800円
会場:ワタリウム美術館
〒150-0001 東京都渋谷区神宮前3-7-6
Tel:03-3402-3001
http://www.watarium.co.jp

 

 

 

 

 

 

February 2,2018