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京都dddギャラリー「ウィム・クロウエル グリッドに魅せられて」展、レポート

text: Yuka Kikuchi photo : Akihito Yoshida

 

落ち葉も色褪せ、本格的な冬がやってきた12月の京都。20世紀のグラフィックデザイン界を牽引したともいわれるグラフィックデザイナー、ウィム・クロウエルの全容を伝える日本初の展示会が京都dddギャラリーで行われている。62点のポスターと約170点ものカタログなど、日本過去最高の展示作品数を見ることができる貴重な機会でもある。

 

SMのロゴでおなじみのStedelijk Museum(アムステルダム市立美術館)でのインデザインやカレンダー、オランダの切手のデザインなどで知られるウィム・クロウエル。彼の代表作品はもちろん、1974年にOlivettiをクライアントにデザインしたGridnikやNew Alphabetの実物デッサン、Total Design時代に手がけた当時の展示会風景、ロゴなど見応えある展覧会になっている。

 

12月14日の初日に行われたトークショーには、Stedelijk Museumでグラフィックデザイン部門のキュレーターを務めるカロリン・フラーゼンブルグさんが登壇。約2年間かけて京都dddギャラリーと共に構想された今回の展覧会は、ウィム・クロウエルの膨大なアーカイブを管理し、またウィム・クロウエル本人とも長年の親交があった彼女の協力がなければ実現することはできなかったという。

 

「I am a engineer trebled by aesthetics」。あえて翻訳するとすれば「巧みにデザインをこなさなければいけないのに、僕はいつも美的なことに気を取られてしまう」という印象的なウィム・クロウエル本人の言葉で彼女はトークを締めた。

 

ギャラリートークが終わると展示会場に移動した彼女と参加者の距離はとても近く、実際に作品を見ながらカロリンさんから話を伺うこともできた。グリッドデザインがウィム・クロウエルの代名詞として多く語られる一方で、彼自身は決してシステマティックではなく、デザインに対してとても情熱的。クライアントのキャラクターをシステマティックなグリッドデザインに乗せて表現しているのだと彼女は語ってくれた。

 

今でこそグラフィックデザインには欠かせないコンピュータだが、ウィム・クロウエルにとっては晩年に道具として使われはじめたばかり。彼が作り上げたともいえるグリッドデザインはコンピュータが普及しはじめた90年代後半から現在まで、デジタルデザインにおいては欠かせないデザインシステムとして再評価されてきたことは明らかである。

 

1940年代、クロウエルが18歳の頃に通っていたフローニンゲンの芸術学校、アカデミア・ミネルヴァ(Art School Academie Minerva, Groningen)では当時古典的な教えが根付いていてバウハウスムーブメントは受け入れられていなかったというが、彼自身は後に前衛的なデザインだけではなく、学校での講師や、アンバサダー、美術館の館長など垣根を超えて活動を広げていった。クロウエル本人が影響を受けたグラフィックデザイナーにジョセフ・ミュラー=ブロックマンやエミール・ルーダーらの名前を挙げていることからも従来的なものに固執することなく独自の感性によって新たなデザインの基盤を浸透させていったといえるのではないだろうか。後にデザイン界の新たなギルドとも言える大規模で多分野型のデザイン事務所Total Designの設立メンバーを担っていることからもそのことが伺える。

 

幼い頃は建築家になりたかったといウィム・クロウエルが美術学校時代に撮影した街の建築物ポートレイトを見ると、その頃から無意識にもシンプルに組まれたデザインに惹かれていたようだ。 しかしそんな彼がデザインにグリッドを用いたきっかけは「インターネットの発展を予見してというよりは、私たちが無茶なオーダーを繰り返すクライアントだったからね」とカロリンさんは語った。 より多くのデザインをこなすために、アシスタントに写真とテキストを添えた手書きのグリッドシートを渡すことによって具体的にこのシートのグリッドのどこに何を置けばいいのかを指示したという。実際に当時のポスターにも見られるグリッドは一本一本太さが違うことには驚きだ。

 

こうして生まれた彼のグリッドデザインは半世紀たった今でも色褪せることない魅力を放っている。

 

ウィム・クロウエルのデザインとその背景にあるストーリー、幼少期から現在に到るまで彼に影響を与えたとされる出来事や人物、彼自身の人間性についても詳しく掘り下げることができる1冊、2015年に刊行された『modanist』も展示会場にて販売中。 その作品1つ1つに隠された意図を感じ取れるのは今回の展示会ならでは。

 

 

 

展示会インフォメーション
「ウィム・クロウエル グリッドに魅せられて」
会期:2017年12月14日(木)-2018年3月17日(土)
時間:11:00-19:00 (土曜・3月4日(日)は18:00まで)
日曜・祝日、12月28日(木)-1月4日(木)は休館 (特別開館3月4日(日)は18:00まで)
入場無料
場所:京都dddギャラリー
http://www.dnp.co.jp/CGI/gallery/schedule/detail.cgi?l=1&t=2&seq=00000714
協力:アムステルダム市立美術館、カロリン・フラーゼンブルグ、ヒレイン・エッシャー・ポスター・コレクション
後援:オランダ王国大使館

書籍情報
Wim Crouwel 『modernist』
464ページ / ハードカバー / 170 x 240 mm / 英語 2015 / Frederique Huygen (著)

 

 

 

 

 

January 10,2018