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「THE EUGENE Studio 1/2 Century later.」展レポート

text : daiki tajiri

Still from Series of White Painting.(ロサンゼルスにて)

 

東京・銀座にある資生堂ギャラリーでは11月21日から12月24日までの間、アートとテクノロジーの可能性を探るTHE EUGENE Studioの展示を鑑賞することができる。

 

インスタレーションや映像制作など多義に渡るジャンルを屈指し、様々なアプローチを行い続けているTHE EUGENE Studio。現在という時間軸に焦点を置き、テクノロジーや科学、社会や時代状況と並行してアート活動を行う彼らにとってこのタイトル「1/2 Century later.」はとても重みがある。

 

タイトルである「あれから半世紀」の意味は、ギャラリーの真ん中に堂々と展示されている作品「善悪の荒野」がわかりやすく表現している。展覧会が終了すると同時に迎える2018年のちょうど半世紀前の1968年、スタンリー・キューブリックの映画「2001年 宇宙の旅」が上映された。その映画に登場する印象的な存在である白い部屋から着想を得たこの作品は、その現代の姿を連想させられると同時に、未来、つまりは現代から半世紀後をも考えさせられる。風化され、ぼろぼろになった美しい空間は、2020年に控える東京オリンピックへの日本の過剰すぎる備え、それ以降のビジョンがみえていない状態にも何か繋がりを感じる。

 

今展覧会のテーマは「破壊から再生へ」であることから、「破壊」を表す大型インスタレーションを囲むのは「再生」だ。向かいの空間に展示されているのは「White Painting」という何も描かれていない白いカンヴァス。筆を持たずともアートを生み出せる現代で彼らが描いたのは、男女・人種問わずに愛する人への思いが込められた人々の接吻の刻印だ。キリスト教やロシア正教で見られるイコンへの接吻行為と似ているが、このプロジェクトでは宗教色が一切なく、時代が興した「再生」としてピースフルでポジティブな空間を創り出している。

 

また、側面にある銅板を素材とした作品は現代のテクノロジーを活用したプロジェクト「農業革命3.0」の設計図としての存在である。バイオテクノロジーに注目し、独自の新素材を使用した衣類や家具などをはじめとするモチーフが豊かな生活として表現されている。ギャラリーの中心にある「破壊」の存在があることによって、銅版の光沢による繊細な反射も伴い、それらの作品は我々にとっての未来への「希望」にみえてくる。

 

作品を鑑賞していると気づくことがある。それは、キャプションの重要性だ。普段は美術館、ギャラリーにしてもキャプションという存在は作家の意図を剥き出しにしてしまい、鑑賞者のイマジネーションを制御してしまうという理由から、蔑ろにされてしまいがちだ。しかし、今展覧会では、作品はもちろんのこと、受け取る側はそれらの制作の過程を知ることによって作品への解釈に深みを増すことができる。あえて説明的な側面を持った上で成り立つ作品も存在することに気づかされるというのも珍しい体験ではないだろうか。

 

新しい物事を創造していくことは、過去を学ぶことなしには不可能であることを証明してくれるTHE EUGENE Studio。今展覧会は、美しい生活文化を日々創造していく資生堂のギャラリーだからこそ相思の魅力を上手く引き出しているのに違いないと、実際にその空間に触れることによって感じることができた。

 

 

■展覧会インフォメーション
THE EUGENE Studio 1/2 Century later.
会期:2017/11/21(火)〜 2017/12/24(日)
時間:平日 11:00〜19:00 日曜・祝日 11:00〜18:00
毎週月曜休(月曜日が祝日にあたる場合も休館)
0:00-18:00(木・金曜は20:00まで)
場所:資生堂ギャラリー
住所:〒104-0061東京都中央区銀座8-8-3 東京銀座資生堂ビル地下1階
URL:http://www.shiseidogroup.jp/gallery/exhibition/

 

■ THE EUGENE Studio
THE EUGENE Studio(ザ・ユージーン・スタジオ)は日本を拠点に、スクリプト、脚本を中核としたインスタレーションや平面、映像作品などを手がける。過去にサーペンタインギャラリー(ロンドン)でのプロジェクトや国内での個展、近年ではアメリカ三大SF賞受賞の小説家ケン・リュウとの共同制作のほか、人工知能や都市、バイオテクノロジー領域の共同研究に招聘されるなど、その活動は国内外で評価されています。創業者のEugene Kangawaは1989年アメリカ生まれ。

 

■ イベントインフォメーション
ギャラリートーク
『若林恵(WIRED 日本版 編集長)× 岩渕貞哉(美術手帖 編集長)× Eugene Kangawa(THE EUGENE Studio)』
日本のカルチャーシーンを代表するメディアの編集長二名とTHE EUGENE Studio のEugene Kangawaによる鼎談が行われる。
日時:12月9日(土)14:00〜16:00
会場:花椿ホール(資生堂銀座ビル3階)
定員:100名 参加費無料(お申し込み多数の場合は抽選)

 

 

 

 

December 15,2017

展覧会会場撮影 : 加藤 健

展覧会会場撮影 : 加藤 健