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東京都写真美術館で開催中「長島有里枝 そしてひとつまみの皮肉と、愛を少々。」展レポート

text, photo : daiki tajiri

《Self-Portrait (Brother #34)》1993年 ゼラチン・シルバー・プリント 東京都写真美術館蔵

 

 

9月30日より11月26日まで、東京都写真美術館にて日本を代表する写真家、長島有里枝のこれまでに発表した作品シリーズを鑑賞することができる。

 

208点に及ぶ作品群に埋め尽くされた展示室には、優しくかつ力強いアーティストの思想と感覚が込められ、本展覧会はデビュー作から最新シリーズまで一堂に展示されているが、どの作品・シリーズをみてもアーティスト自身が色濃く写し出されているように感じる。

 

大学の卒業制作でありデビュー作である〈Self-Portrait〉シリーズや同級生や同世代の若者を写した〈empty white room〉シリーズでは、90年代という時代特徴ともいえるが、スナップショットの手法でしか写し出すことのできないギラギラとした被写体の表情や空気の光が鮮明にそして少し儚く我々の目に焼きつく。

 

また、〈empty white room〉シリーズをはじめとする直感的に撮影された作品群は鑑賞していくにつれて1つの知らない世界の中に入ったように感じ、なんとなく楽しそうで羨ましい気持ちになるのも不思議だ。

 

鑑賞を続けると、コンセプチュアルな視点を見受けられるのも面白い。〈SWISS〉シリーズは、アーティスト自身の祖母が撮影した写真から着想を得て、当時、アート・イン・レジデンスで訪れたスイスで、ポートレイト撮影の手法で植物などを撮影したシリーズだ。アーティストの祖母が生きた携帯電話やスマートフォンもない時代に趣味として写真撮影をするという、今の我々には体験することのできない性差や制限といったものを受け入れ、アーティストは深く追求している。

 

展示室の真ん中に堂々と設置されている沢山の洋服や布がつなぎ合わされて作られたテントとタープは家庭を表しているそうだ。アーティスト自身の実母とパートナーの母と制作したもので、家族の温もりや閉ざされた空間としての家などを表現している。まるで、お互いを信頼しあい過酷な現代を共に生き抜いていくファミリーキャンプのように。

 

また、作品と向き合うため、作品以外のものを最小限に減らし展示しているせいか、鑑賞中はアーティストとキュレーションへの細かいこだわりにも気付く。シリーズごとに変化する作品同士の間隔や額装、プリントの展示方法まで、写真の展覧会ならではの楽しみ方も見いだすことができる。展示室を何周しても新しい発見があるのだ。

 

現代はスマートフォンやSNSが普及し、さらに近年ではインスタントカメラを始めとしたフィルムカメラの流行もあり写真を撮るという行為が一般的になっている。わざわざエフェクトをかけてアナログの質感に近づける人々が増えている中、そのようなことをしても絶対に真似ることのできない作品を今回の展覧会ではみることができる。

 

エモーショナルな感覚というのは、向こうから訪れるものであり、決して作り出すことはできない。この展覧会はそのような近い過去では当たり前でも現在では気付きづらい感覚を教えてくれる。人として少なくとも過去にあった感覚を、今生きている我々も理解するもしくは思い出すべきではないだろうか。

 

 

 

 

■展覧会インフォメーション
長島有里枝 そしてひとつまみの皮肉と、愛を少々。
2017/9/30(土)〜 2017/11/26(日)10:00-18:00(木・金曜は20:00まで)
料金:一般 800円/学生 700円/中高生・65歳以上 600円
場所:東京都写真美術館 2階展示室
住所:〒153-0062 東京都目黒区三田1-13-3 恵比寿ガーデンプレイス内
URL:http://topmuseum.jp/contents/exhibition/index-2850.html

 

■イベントインフォメーション
担当学芸員によるギャラリートーク
2017年11月24日(金) 14:00〜
会期中の第2、第4金曜日14:00 より、担当学芸員による展示解説を行います。  
展覧会チケット(当日消印)をご持参のうえ、2階展示室入口にお集まりください。

 

■長島有里枝
1973年、東京都中野区生まれ。1995年、武蔵野美術大学造形学部視覚伝達デザイン学科卒業。1999年、カリフォルニア芸術大学にてMaster of Fine Arts取得。1993年、家族とのポートレイトで「アーバナート#2」展パルコ賞を受賞しデビュー。2001年、写真集『PASTIME PARADISE』(マドラ出版、2000年)で、第26回木村伊兵衛賞受賞。2010年、エッセイ集『背中の記憶』(講談社、2009年)で第26回講談社エッセイ賞受賞。主な写真集に『YURIE NAGASHIMA』(風雅書房、1995年)、『empty white room』(リトルモア、1995年)、『家族』(光琳社出版、1998年)、『not six』(スイッチパブリッシング、2004年)、『SWISS』(赤々舎、2010年)、『5 Comes After 6』(マッチアンドカンパニー、2014年)など。

 

 

 

 

 

 

November 15,2017