QUOTATION

新たなWebギャラリー&コンセプトショップサービス「KATALOKooo(カタロクー)」

text : Shiyo Yamashita

 

ジュエリー、服、インテリア小物、家具など、あらゆる分野にわたる作家やブランドの創作活動をサポートするための新しいWebギャラリー&コンセプトショップ「KATALOKooo(カタロクー)」がローンチした。個人でウェブサイトやオンラインショップを運営したいけれど、予算もスキルも時間の余裕もない、という人たちが、気軽に、しかしクオリティの高いショップを持てるようにと作られたこのサービス。

立ち上げたのは翠川裕美。株式会社イデーと株式会社スマイルズでの経験を積んだ後、2013年に企画、販促プロモーション、デザイン、アーティストマネージメントなどを幅広く手がけるべく独立。これまで様々なアーティストや工芸作家たちと公私にわたって付き合い、その活動を応援してきた彼女は「アーティストや作家が販売方法や販売促進活動など、創作と関係ないことに労力をかけなければならないという問題を解決し、作品づくりにもっと没頭できるようにしてあげたい!」という思いから、新しい時代のカタログを目指す「KATALOKooo」のプロジェクトを始動させたのだという。

「仕事を通じて様々なアーティストや作家の人たちとのネットワークを構築してきましたが、オリジナリティに溢れた良いものを誠実に作っているのに、なかなかそれだけでは食べていけないという人たちをたくさん見てきました。発信をうまくやればもっと売れるのに……という姿を見ているのは、実にもどかしい思いでしたね。そういう人たちからの“何とかしてほしい”という切実なリクエストもあって、よし!と一念発起したんです」(翠川氏)

しかし、既にショッピングモール型のネットショップが多く存在する中で新たなサービスを始めるのはかなりチャレンジングなこと。世の中にはアマゾンや楽天のような巨大モールもあれば、ハンドメイド系の作家が出店する小規模なショッピングサイトもあるのだから。ただ、翠川氏が「KATALOKooo」でやりたいことは、これらとは根本的に違う。彼女が目指すのは、並列な売る側・買う側の両方にとって利便性が高いブランドサイト。一般的なセレクトショップとは違い、あくまでそれぞれのブランドがオーナーとなるもので、「KATALOKooo」は見えない部分で丁寧なサポートをしていく、という。

 

■クリエイションに専念させる仕組みを

「作家やアーティストが自分でクオリティの高いブランドサイトやWebショップを作るのは大変なこと。また、Webショップの管理担当者をつけるとなると人件費もかかる。ショップ運営や売り上げ向上のノウハウや、海外展開の方法など、わからないこともたくさんあると思います。そういう「資金不足」、「人材不足」、「ウェブスキル不足」を補うのがカタロクーの使命です」(翠川氏)

そんなKATALOKoooの基本は、“ブランドサイトがWebショップでもある”ということ。美しいヴィジュアルを最大限に活用することでブランドの世界観を表現し、そこから直接販売に繋げる「LOOK BOOK」の機能が、一般的なWebショップとは大きく異なるところだ。とにかく写真が大きいので、売り手にとっては商品の良さを余すところなくアピールすることができるし、買い手にとっては実物を見ているかのようなリアル感を得られる。クオリティの低い商品には不利になるかもしれないが、翠川氏は「この写真の大きさに耐えられるだけのクオリティの商品を作るブランドだけが集まるという利点がある」と胸を張る。

価格によってプランの内容は違うが、ベーシックプランでも細かな部分にまで気を使ったサービスが満載されているので安心。ハイグレードプランになれば、顧客データの分析や販売企画などといった、きめ細かなコンサルティングサービスも受けられるという。

 

■ユーザーとクリエイターの双方に向けたカンファレンス

「私たちの目指すのはWebショップ運営のノウハウをみんなでシェアすること」と話す翠川氏。彼女は今、サービスの内容などを紹介するのと合わせ、ビジネスとクリエイティヴの両方の識者を招いてのカンファレンス「Survive with Creatives」を不定期で開催している。
「私がカンファレンスを開く大きな理由のひとつに、ユーザー層の教育があります。1回だけやっても意味がないので、何度もやってパイを広げていきたいと思っています。とりあえず、スタートしたばかりの今は影響力や知識を持った人に力をお借りしながらやっているところです。もうひとつの大きな理由が、クリエイティブ側の人を勇気づけたいということ。“こんな風にやっていけば、クリエイティブに生きていけるんだ!”と思えるように、既にその方法を見つけ出したアーティストや作家の方にアドバイスをいただくような会も用意しています」(翠川氏)

第一回に招いたのは、イデー創業者で、無名時代のマーク・ニューソンやマイケル・ヤングの才能を見出し、彼らのものづくりを支えたことでも知られる黒崎輝男氏。2005年にイデーの代表取締役を退任してからはFlowstone(流石創造集団株式会社)を設立し、「Farmers Market @UNU」「みどり荘」などといった“場”を作り続けてきた氏は、彼女がこの世界に飛び込んだきっかけを作った、メンター的な存在でもある。
「私がアーティストや作家をサポートしたいと思うようになったのは、黒崎さんとの出会いがあったから。黒崎さんは“かっこいい場所を作って、そこに人が集まるようにする”ということをやってきた人。私は20歳くらいの時にそんな黒崎さんを見て、仲間に入りたいと思ったんです。今でも黒崎さんは憧れの人なんです」(翠川氏)

 

■価値観に共感した人が集まる“場”  - 黒崎輝男氏

その黒崎氏はカンファレンスの時にこんな言葉を残した。
「あいつ面白いじゃん、とりあえず仲間に入れちゃおう。そんな視点が今のシーンには欠けている。大事なのは技術よりも視点だと僕は思っているんです。どういう思想で物を作っているのか、一本筋が通った物を作っているか。その美しい思想をどうやって生活すること、つまりお金に繋げていくのか。小売のやり方も変わっていかなきゃならないし、変わってきている。売る方も最初から金儲けをしようという考えでやるのではなく、自分が何をやりたいのかを見つめ直すことが大事。それと、今は物を買う人の目が肥える機会がない。自分が好きなものを見つけられるのは限られた人で、そうでない人はいいものに出会えない。そんな状況をなんとかしなきゃいけないと思っています」(黒崎氏)

そんな黒崎氏の言葉を聞いて、翠川氏は「原点に戻る気分だった」とコメント。
「黒崎さんが大切にしているのは、一貫して“場”の価値観に共感して人が集まってくる、ということ。ただ、リアルな場であれば体感があるけれど、ウェブにはそれがない。そこをなんとか実現していきたいと思いましたね。小売と言うやり方が変わってきているということは私もすごく実感しています。売上をつくれる作家の人でも、卸でしか売ったことがないという人は結構いる。彼らは卸先の采配でしかものが作れないから、ある時自分はこんなことを一生続けていくのか?と悩むことになる。それを、私は直営店の些事を肩代わりするというやり方で解決していきたいんです」(翠川氏)

 

■クリエイティブは初めの一歩 - 遠山正道氏

一方、第二回のカンファレンスのゲストは、最初の就職先である株式会社スマイルズの社長、遠山正道氏。この会ではクリエイティブであることをどうビジネスに結びつけていくかを軸に、面白いことをやり続けるためにはどうしたらいいかなどについての話が中心となった。
「遠山さんは“正直にやって馬鹿を見るなら、それはそれでしょうがない。でも僕らは僕らの美学でやる”という態度を貫き、それでもきちんと成功を収めてきた。スマイルズに「低投資高感度」、「誠実」、「作品性」、「主体性」、「賞賛」という『スマイルズの五感』というのがあるんですが、これは今も私の指針となっています」(翠川氏)

カンファレンス冒頭、「クリエイティブであることというのは、一番最初の、当たり前の動機としてあると思ってきた」と発言した遠山氏。
「仕事って一人一人がそれを他人ごとではなく“自分ごと”にできると、毎日が楽しくなる。ただ、自分にエンジンのある人、電車でいうと先頭車両みたいな人じゃないと辛い。引っ張られるだけの貨車みたいな人は居場所がなくなっていきます。事業の7割は失敗するものだから、失敗したっていいんです。その時にきちんと試行錯誤して、仲間同士、ネットワークで問題を解決していくことが大事。面白いことをやり続けるためには、人々の期待を超えていくこと。期待を超えれば、その感情は賞賛に変わります。あとは“矢印は常に前を向いている”ということも大事かな」(遠山氏)

そう話す遠山氏は、「個人のビジネスが最近すごく面白いと思っている。事業は大きくなればなるほど凡庸になるんです。小さいと自分のアイディアやネットワークを発揮できるし、本人もやりがいを感じることができる。まさにクリエイティブそのものですよね。100億のブランドを作るより、1億のブランドを100個作った方がずっと面白い」とも。この言葉は翠川を大いに勇気づけたという。
「私はKATALOKoooというシステムを通し、個人だけが輝くサポートではなく、業界全体の底上げを目指したい。今回お話を伺って、改めて誠実に、クリエイティブに人生を捧げていきたいと思いました」(翠川氏)

 

■ユーザーフレンドリーなサービスをギミックなしで実現

KATALOKoooは今後1年のうちに出店数を100ブランドにまで広げていきたいと考えているそう。KATALOKoooはユーザーが生み出す作品自体のクオリティの高さが何よりの鍵のため、簡単に規模を大きくしていくことはできないが、あくまで作り手とユーザーが対等の立場で、お互いハッピーになれるようなサービスを目指している。

「私がやりたいことのひとつは、クリエイターによってシーンを活性化させていくこと。もうひとつはユーザーを育てていきたいということ。緩やかな繋がりからユーザーに新しい視点を提供していけるようなレコメンドサービスも考えています。もちろん、リアルな体験も大切だと考えているので、そのあたりも今後の課題です。出店者の皆さんには“この仕組みがあったから、やりたくない仕事をやらないで済んだ”“自分の商品にファンができて、その人たちのために作ることができるようになった”と思ってもらえるようになったら嬉しいですね」(翠川氏)

 

https://katalok.ooo/

 

 

 

 

 

September 17,2017

KATALOKoooを起用したウェブショップ、ギャラリーのデザイン例

KATALOKoooを起用したウェブショップ、ギャラリーのデザイン例

KATALOKoooディレクター翠川裕美氏(右)

KATALOKoooディレクター翠川裕美氏(右)

カンファレンス第1回目は黒崎輝男氏とみどり荘で開催

カンファレンス第1回目は黒崎輝男氏とみどり荘で開催

黒崎輝男氏

黒崎輝男氏

カンファレンス第2回目は株式会社スマイルズの社長である遠山正道氏と中目黒蔦屋で開催

カンファレンス第2回目は株式会社スマイルズの社長である遠山正道氏と中目黒蔦屋で開催

遠山正道氏

遠山正道氏