QUOTATION

Talents Tokyo 2016締め切り迫る / 2015 TOKYO FILMeX

text : asako tsurusaki

ヴィザージュ

独創的な作品をアジアを中心とした世界から集めた、国際映画祭「東京フィルメックス」。
ここでしか見ることのできない活きのいいアジアの新進作家の紹介となるコンペティション部門や制作バックアップを行う「Talents Tokyo」、そして世界的に活躍している映画作家たちの貴重な特集上映など、様々なプログラムが組まれている。
大いなる賑わいを見せた昨年の開催では、特集上映として台湾ニューウェーブを代表する映画監督として世界中に熱狂的なファンを生み続けているホウ・シャオシェン特集や、劇場公開のための長編映画製作からの突然の引退を宣言したツァイ・ミンリャン監督の特集上映、そしてジャック・タチの創作活動に大きな貢献を果たしたとされるピエール・エテックスの貴重な2作品が上映された。

特集上映の中でも1989年ヴェネチア映画祭で中国語圏映画では史上初の金獅子賞を受賞したホウ・シャオシェンの代表作『悲情城市』は、デジタルリマスターが増えている現状、監督の強い意志によりフィルムでの上映という貴重な機会に、多くの観客の高揚した熱気で会場が包まれた。「2.28事件」を背景に台湾北部の港町に暮らす大家族の変遷を描いたこの作品は、トニー・レオンが聴覚障がい者の主人公を好演した傑作。Q&Aで登壇した監督はトニーの起用に、有名なスターを出すことが投資者の条件であり、それが理由で以前から知っていた彼をオファーしたこと、そして台湾語が苦手な彼の為に聴覚障害者の役に設定されたというエピソードを語ってくれた。もう一つの特集、ツァイ・ミンリャン監督上映で注目すべきは、「サロメ」をモチーフに映画を撮ろうとする監督をめぐる夢幻的な世界を描いた『ヴィザージュ』。日本での劇場未公開であるこの作品は、フランスでルーブル美術館を舞台にして、ジャン=ピエール・レオ、ファニー・アルダン、ジャンヌ・モローも出演していることで話題を呼んだ。

またアジアの新進作家を紹介するコンペティション部門で(惜しくも受賞は逃したが)極めて異色を放っていたのは、フィリピンのレムトン・シエガ・ズアソラ監督による『人質交換』。マルコス大統領が追放されたエドゥサ革命を翌年に控えた1985年に実際に起こった子供の誘拐事件を元にした作品だ。全編1ショットノーカットで撮影された本作は、時折天井桟敷並みの艶かしい演出を交えながらも、最後まで突き抜ける緊張感走る作品であった。それもそのはず、この「実際に起こった」誘拐事件とは、まだ記憶もない幼い頃に誘拐され、解放されたというレムトン監督自らの体験だったのだ。日本には馴染みが薄いマルコス政権やエドゥサ革命だが、フィルム全編からその血生臭い歴史が会場まで匂い立つようであった。

そして今回紹介したいのが、同時期に毎年開催されている、TOKYO FILMeXのもう一つの大事なミッション。アジア圏の映画監督、プロデューサーを対象にした人材育成プロジェクト、「タレンツ・トーキョー」だ。

これまで台湾のホウ・シャオシェン、中国のジャ・ジャンクー、タイのアピチャッポン・ウィーラセタクンといった世界的映画監督たちを講師に招き、映画制作のノウハウを学びながら国際的なネットワークを築く機会が得られるこのプロジェクト。毎年11月後半の東京フィルメックス期間中に開催され、これまでに95名の修了生を送り出し、そのなかにはラヴ・ディアスの作品に関わるなど、これまでに世界的な活躍が多く見られている。またカンヌ国際映画祭カメラドールや台湾金馬奨を初めとした世界中の映画祭で評価されたアンソニー・チェン監督の『イロイロ ぬくもりの記憶』(2013)も、2010年、東京フィルメックスのNext Masters Tokyo(現・Talents  Tokyo)に参加した際にプレゼンされ、最優秀企画賞を受賞した企画が長編デビュー作『ILO ILO』として結実した作品だ。

4月某日、都内で2016年のTalents Tokyo 2016に向けたプレイベントが開催された。
国際交流基金アジアセンターのアジア・フェローシップで「KODOKUSHI」の企画をブラッシュアップするためにフィリピンより来日中のJANUS VICTORIA監督(2013タレンツ・トーキョー参加)や、同作品のプロデューサーを務める日本人修了生の曽我満寿美プロデューサー(2011年参加)のトークなどが披露された。

「フィリピンでは、インディペンデントの助成は多くあります。ですが、作り終わった後がどうなるかについてのフォローというものがあまりありません。作家というものは、作ったあとのことはあまり考えません。ですが映画というものはコミュニケーションであり、日記ではありません。伝える相手がいないと、存在の意味がないんです。私がTalents Tokyoに参加して一番印象的だったのは、”映画祭などで企画のプレゼンをする前から、セールスと配給の事は考えておかなければいけない”というアドバイスでした。この一言をきっかけに初めてセールスを意識するようになり、脚本を書き、撮影し、編集するだけではない映画製作の現実が理解できるようになりました」。
(JANUS VICTORIA監督)

応募のポイントは、「なぜ映画作りをしたいのか」という熱い想い、そして自分が企画したい作品の明確なヴィジョン。2016年度の締め切りは6/15。今年も多くの才能が集結し、秋にお目見えできることを期待している。

 

TOKYO FILMeX公式サイト:
http://filmex.net/

Talents Tokyo 2016公式サイト:
http://talents-tokyo.jp/2016/

 

ヴィザージュ:
『ヴィザージュ』Face / Visage / 臉
フランス、台湾、ベルギー、オランダ / 2009 / 141分
監督:ツァイ・ミンリャン (TSAI Ming-liang)

悲情城市:
提供:ぴあ株式会社
『悲情城市』 A City of Sadness / 悲情城市
台湾 / 1989 / 160分
監督:侯孝賢 (HOU Hsiao Hsien)

人質交換:
『人質交換』 SWAP
フィリピン / 2015 / 97分
監督:レムトン・シエガ・ズアソラ(Remton Siega ZUASOLA)

 

 

 

 

June 13,2016

悲情城市

人質交換